肝疾患における血清ラミニン値および分解産物とラミニンの肝組織内分布に関する研究

各種肝疾患における血清ラミニン値を,肝の線維化進展の程度,ラミニンの肝組織内分布及び血清中の抗ラミニンP1抗体の対応抗原の検索と対比し,血清ラミニン値の測定意義を検討した.血清ラミニン値は,急性肝炎特に劇症肝炎,慢性肝炎,肝硬変,原発性肝癌で健常人に比し有意な上昇を認めた.慢性肝疾患における血清ラミニン値は,線維化進展の程度と相関を示した.ラミニンの肝組織内分布の検討では,肝硬変で類洞に沿った出現を認め基底膜化との関連が示唆された.原発性肝癌では,腫瘍内血管壁にのみラミニンを認めた.Western immunoblot法で,健常人および各種肝疾患患者血清中にはラミニン分解産物の多様性が示され,...

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Published in肝臓 Vol. 29; no. 4; pp. 537 - 545
Main Authors 山本, 泰猛, 大西, 三朗, 井戸, 英司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1988
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.29.537

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Summary:各種肝疾患における血清ラミニン値を,肝の線維化進展の程度,ラミニンの肝組織内分布及び血清中の抗ラミニンP1抗体の対応抗原の検索と対比し,血清ラミニン値の測定意義を検討した.血清ラミニン値は,急性肝炎特に劇症肝炎,慢性肝炎,肝硬変,原発性肝癌で健常人に比し有意な上昇を認めた.慢性肝疾患における血清ラミニン値は,線維化進展の程度と相関を示した.ラミニンの肝組織内分布の検討では,肝硬変で類洞に沿った出現を認め基底膜化との関連が示唆された.原発性肝癌では,腫瘍内血管壁にのみラミニンを認めた.Western immunoblot法で,健常人および各種肝疾患患者血清中にはラミニン分解産物の多様性が示され,原発性および転移性肝癌では分子量280K (Kilo daltons),他の肝疾患では分子量350Kの増量が認められた.従って両群では,血清ラミニン値の上昇機序に差異のあることが示唆された.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.29.537