腹部大動脈-両側大腿動脈バイパス術後に発症した脊髄障害についての検討

腹部大動脈手術時の脊髄障害は希だが, 患者の quality of life の上からも重大な合併症である. 今回, われわれは腹部大動脈・腸骨動脈領域の閉塞性動脈硬化症術後に右下肢麻痺を発症した1例を経験した. 症例は59歳の男性. 左総腸骨動脈, 右外腸骨動脈の閉塞性動脈硬化症に対する腹部大動脈・両側大腿動脈バイパス術後に右側の第2腰髄 (L2) から第1仙髄 (S1) にかけての運動および痛覚麻痺が出現した. 脊髄障害は内科的治療などによりS1は改善したもののL2-L5は改善せず, 患者は術後3か月目に退院した. 腹部大動脈-大腿動脈バイパス術において, 粥状硬化の強い腹部大動脈に対する...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 21; no. 6; pp. 593 - 596
Main Authors 渡田, 正二, 白石, 昭一郎, 杉田, 隆彰, 森, 渥視, 松野, 修一, 野島, 武久, 尾上, 雅彦, 田畑, 良宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 1992
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.21.593

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Summary:腹部大動脈手術時の脊髄障害は希だが, 患者の quality of life の上からも重大な合併症である. 今回, われわれは腹部大動脈・腸骨動脈領域の閉塞性動脈硬化症術後に右下肢麻痺を発症した1例を経験した. 症例は59歳の男性. 左総腸骨動脈, 右外腸骨動脈の閉塞性動脈硬化症に対する腹部大動脈・両側大腿動脈バイパス術後に右側の第2腰髄 (L2) から第1仙髄 (S1) にかけての運動および痛覚麻痺が出現した. 脊髄障害は内科的治療などによりS1は改善したもののL2-L5は改善せず, 患者は術後3か月目に退院した. 腹部大動脈-大腿動脈バイパス術において, 粥状硬化の強い腹部大動脈に対する side clamp は腰動脈の開口部を閉塞させる可能性があり, 脊髄障害発症の危険性を高めると考えられる.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.21.593