肝細胞再生におよぼすアルコールの影響

アルコールの肝再生に及ぼす影響を明らかにするために,急性および慢性アルコール投与ラットについて,70%部分肝切除後の肝細胞再生に対して,アルコールがいかなる影響を示すかを検討した.肝細胞の再生能は,肝細胞DNAへの3H-thymidineの取り込み,autoradio-graphyによる肝細胞核のlabeling indexおよびflow cytometryによる遊離肝細胞分裂各周期の細胞分布状態より分析した.急性アルコール投与によって,肝細胞DNA合成の遅延と細胞周期S期の細胞の増加の遅延がみられた.また,慢性アルコール投与によってDNA合成の抑制およびS期の細胞の減少がみられたが,これらの...

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Published in肝臓 Vol. 29; no. 2; pp. 182 - 189
Main Authors 民野, 均, 根井, 仁一, 高田, 昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1988
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.29.182

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Summary:アルコールの肝再生に及ぼす影響を明らかにするために,急性および慢性アルコール投与ラットについて,70%部分肝切除後の肝細胞再生に対して,アルコールがいかなる影響を示すかを検討した.肝細胞の再生能は,肝細胞DNAへの3H-thymidineの取り込み,autoradio-graphyによる肝細胞核のlabeling indexおよびflow cytometryによる遊離肝細胞分裂各周期の細胞分布状態より分析した.急性アルコール投与によって,肝細胞DNA合成の遅延と細胞周期S期の細胞の増加の遅延がみられた.また,慢性アルコール投与によってDNA合成の抑制およびS期の細胞の減少がみられたが,これらのことは,アルコールが肝細胞の再生に対して抑制的に働くことを示しており,このアルコールによる肝細胞再生抑制作用は肝障害の進展に重要な役割を果していると推定された.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.29.182