炎症性高位腹部大動脈閉塞症の1治験例

われわれは非常に珍しい高安大動脈炎が成因と考えられる高位腹部大動脈閉塞症の1例を経験したので報告する. 症例は46歳男性, 主訴は間歇性跛行の増悪, 下腹部痛, 発熱. 入院時, 血液検査で炎症所見著明で, 腹部CT上も大動脈壁の著明な肥厚を伴う腹部大動脈閉塞を認めた. ステロイド内服を開始し, 炎症所見が正常化した後手術を施行した. 手術は大動脈-両側大腿動脈バイパス術で, 中枢側吻合は端々吻合で行い, グラフトの残りで吻合部のラッピングを追加した. また大動脈周囲の癒着は著明で, 炎症性病変を示唆した. 血管壁の病理診断は高安大動脈炎であったが, 術前の抗リン脂質抗体陽性より, 抗リン脂質...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 28; no. 6; pp. 385 - 388
Main Authors 森田, 一郎, 野上, 厚志, 正木, 久男, 藤原, 巍, 稲田, 洋, 菊川, 大樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.11.1999
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.28.385

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Summary:われわれは非常に珍しい高安大動脈炎が成因と考えられる高位腹部大動脈閉塞症の1例を経験したので報告する. 症例は46歳男性, 主訴は間歇性跛行の増悪, 下腹部痛, 発熱. 入院時, 血液検査で炎症所見著明で, 腹部CT上も大動脈壁の著明な肥厚を伴う腹部大動脈閉塞を認めた. ステロイド内服を開始し, 炎症所見が正常化した後手術を施行した. 手術は大動脈-両側大腿動脈バイパス術で, 中枢側吻合は端々吻合で行い, グラフトの残りで吻合部のラッピングを追加した. また大動脈周囲の癒着は著明で, 炎症性病変を示唆した. 血管壁の病理診断は高安大動脈炎であったが, 術前の抗リン脂質抗体陽性より, 抗リン脂質抗体症候群も本症例の成因の可能性を示唆した. 今後, 炎症の再燃に十分気をつけながら経過観察していくつもりである.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.28.385