抗凝固療法施行中に発症した非閉塞性腸管梗塞症の1例

症例は79歳,女性.主訴は下腹部痛.既往歴は66歳時心筋梗塞.冠動脈バイパス手術を受け,以後ワーファリン,降圧薬,抗不整脈薬を内服していた.突然の下腹部痛を主訴に当院を受診し,イレウスの診断で入院となった.トロンボテスト19%と凝固能の低下を認めた.翌日腹膜刺激症状が出現し穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.回腸が分節状に壊死していた.腸間膜動脈根部の拍動は触知した.組織学的には粘膜,粘膜下層の出血性壊死を認めた.非閉塞性腸管梗塞症 (NOMI) と診断した.術後はヘパリン持続静脈内投与を行い,経口摂取開始後ワーファリンの内服に切り替えた.術後出血や血栓,塞栓症はなく心疾患の増悪は認めなか...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 62; no. 2; pp. 425 - 430
Main Authors 澤木, 正孝, 松崎, 正明, 神谷, 勲, 赤座, 薫, 竹下, 洋基, 徳永, 裕
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本臨床外科学会 25.02.2001
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Summary:症例は79歳,女性.主訴は下腹部痛.既往歴は66歳時心筋梗塞.冠動脈バイパス手術を受け,以後ワーファリン,降圧薬,抗不整脈薬を内服していた.突然の下腹部痛を主訴に当院を受診し,イレウスの診断で入院となった.トロンボテスト19%と凝固能の低下を認めた.翌日腹膜刺激症状が出現し穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.回腸が分節状に壊死していた.腸間膜動脈根部の拍動は触知した.組織学的には粘膜,粘膜下層の出血性壊死を認めた.非閉塞性腸管梗塞症 (NOMI) と診断した.術後はヘパリン持続静脈内投与を行い,経口摂取開始後ワーファリンの内服に切り替えた.術後出血や血栓,塞栓症はなく心疾患の増悪は認めなかった.心血管系の合併症を有する腹痛患者では先ずhigh risk groupを設定し、早期に腸間膜血栓,、塞栓症と同時にNOMIの可能性を考慮した検査,治療が必要であると考えられた.また抗凝固療法はNOMIに対しては有効でないことが示唆された.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.62.425