多発性骨髄腫―最近の研究の進歩

多発性骨髄腫(MM)の現況について概観した. 病因について, IL6が見出されてより病因との関連で精力的に研究されてきた. しかし, 例えばヒトIL6cDNAを組み込んだtransgenicマウスに形質細胞腫が得られないことや, ゲノムでIL6と相同性を有するKSHVがMM患者の培養樹状細胞中に認められることなどが明らかにされ, 現在ではIL6がMMの病因でないことがほぼ確実となっている. 癌遺伝子との関連でMMの多数にみられるIgH遺伝子座との転座のパートナーがいくつか挙げられ, MMの多段階発癌説がうらづけられつつある. MMの病態で, 骨破壊がMM細胞, 破骨細胞, 骨芽細胞, ストロー...

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Published in医療 Vol. 54; no. 6; pp. 258 - 264
Main Author 戸川, 敦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 20.06.2000
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.54.258

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Summary:多発性骨髄腫(MM)の現況について概観した. 病因について, IL6が見出されてより病因との関連で精力的に研究されてきた. しかし, 例えばヒトIL6cDNAを組み込んだtransgenicマウスに形質細胞腫が得られないことや, ゲノムでIL6と相同性を有するKSHVがMM患者の培養樹状細胞中に認められることなどが明らかにされ, 現在ではIL6がMMの病因でないことがほぼ確実となっている. 癌遺伝子との関連でMMの多数にみられるIgH遺伝子座との転座のパートナーがいくつか挙げられ, MMの多段階発癌説がうらづけられつつある. MMの病態で, 骨破壊がMM細胞, 破骨細胞, 骨芽細胞, ストローマ細胞などのリンクの中で生じ, 各種サイトカイン, ケモカインが仲立ちして進行していくこと, またプロテオグリカンが細胞接着や造血を調整していることが明らかにされつつある. 治療で自家末梢血幹細胞移植療法がほぼ完成の域にあり, そのほかビスホスフォネート, サリドマイドが話題となっている.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.54.258