第9回心臓性急死研究会 家族内に集積した洞不全症候群の1例

同一家系内2世代に5人の患者の集積を認めた,若年発症の洞不全症候群の1例である.症例は30歳,男性,職業は競輪選手であり,12誘導心電図は,心拍数40/分の洞性徐脈,房室解離を示した.Holter心電図では平均心拍数52/分,最低心拍数24/分の著明な徐脈と,早朝に5~13秒の心停止を認めた.電気生理学的検査における薬理学的自律神経遮断後の固有心拍数は77/分にとどまり,右房連続刺激後は房室接合部調律で回復し,修正房室接合部回復時間は11.5秒と著明に延長した.発作性心房細動および洞調律回復時の洞停止により失神を生じたため,ペースメーカー植え込みを行った弟5人中2人(本例30歳,兄47歳),母...

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Published in心臓 Vol. 29; no. Supplement5; pp. 129 - 134
Main Authors 杉下, 靖郎, 山口, 巌, 山田, さつき, 仁保, 文平, 遠藤, 優枝, 増見, 智子, 鈴木, 祥司, 栗原, 達, 前田, 裕史, 久賀, 圭祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1997
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.29.Supplement5_129

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Summary:同一家系内2世代に5人の患者の集積を認めた,若年発症の洞不全症候群の1例である.症例は30歳,男性,職業は競輪選手であり,12誘導心電図は,心拍数40/分の洞性徐脈,房室解離を示した.Holter心電図では平均心拍数52/分,最低心拍数24/分の著明な徐脈と,早朝に5~13秒の心停止を認めた.電気生理学的検査における薬理学的自律神経遮断後の固有心拍数は77/分にとどまり,右房連続刺激後は房室接合部調律で回復し,修正房室接合部回復時間は11.5秒と著明に延長した.発作性心房細動および洞調律回復時の洞停止により失神を生じたため,ペースメーカー植え込みを行った弟5人中2人(本例30歳,兄47歳),母の兄弟姉妹8人中3人(母70歳,姉75歳,妹65歳)の計5名が洞不全症候群と診断され,ペースメーカーの植え込みを受けていた.本邦における家族性洞不全症候群の報告は稀であり,3家系に突然死の報告がある.本例でも洞結節に加え房室結節およびその遠位の刺激伝導系の障害が示唆され,洞不全症候群において家族内集積が疑われた場合は突然死の可能性があり,慎重な家系調査と経過観察が必要と考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.29.Supplement5_129