HIV感染に合併した劇症型アメーバ性大腸炎の1例

症例は49歳, 男性. 2003年8月に腹痛, 下痢を訴え, 12日後に下血と発熱が出現した. その3日後にイレウスの診断で近医に入院したが軽快せず, 発症19日後に当科に転院した. 入院時, 肛門から膿と壊死組織の混入した腸液が多量に流出し, 内視鏡検査で直腸・S状結腸の粘膜壊死が認められた. 腸管壊死による腹膜炎を疑い, 緊急手術を施行した. 腹腔には悪臭を伴う混濁した腹水を認め, S状結腸, 直腸, 盲腸が壊死に陥っていた. 壊死腸管を切除し, 回腸・上行結腸双孔式ストーマ, 下行結腸ストーマを造設した. 赤痢アメーバによる大腸炎を疑い, 手術当日より胃管からメトロニダゾールを投与した....

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 26; no. 1; pp. 91 - 95
Main Authors 荒井, 武和, 大見, 琢磨, 野澤, 慶次郎, 味村, 俊樹, 白, 京訓, 安達, 実樹, 松田, 圭二, 山田, 英樹, 小平, 進, 沖永, 功太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.01.2006
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem1993.26.91

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Summary:症例は49歳, 男性. 2003年8月に腹痛, 下痢を訴え, 12日後に下血と発熱が出現した. その3日後にイレウスの診断で近医に入院したが軽快せず, 発症19日後に当科に転院した. 入院時, 肛門から膿と壊死組織の混入した腸液が多量に流出し, 内視鏡検査で直腸・S状結腸の粘膜壊死が認められた. 腸管壊死による腹膜炎を疑い, 緊急手術を施行した. 腹腔には悪臭を伴う混濁した腹水を認め, S状結腸, 直腸, 盲腸が壊死に陥っていた. 壊死腸管を切除し, 回腸・上行結腸双孔式ストーマ, 下行結腸ストーマを造設した. 赤痢アメーバによる大腸炎を疑い, 手術当日より胃管からメトロニダゾールを投与した. 切除標本の病理検査で赤痢アメーバが確認された. 術後, HIV抗体陽性であることが判明した. 術後一時は回復傾向にあったが, 播種性血管内凝固症候群 (以下, DIC), 肝不全, 腎不全を併発し, 第51病日に死亡した. 近年, アメーバ性大腸炎, AIDSともに増加傾向にあり, これらを念頭に置いた早期の診断・治療が劇症化の阻止と救命に肝要と考えられた.
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem1993.26.91