拡張型心筋症を伴った中毒性多結節性甲状腺腫の1例

症例は80歳代女性。既往歴に拡張型心筋症あり。4年前に心不全を発症したが治療により病状は安定していた。1年前より無症状の甲状腺腫瘍と潜在性甲状腺機能亢進症のため当院内科にて経過観察を行っていた。バセドウ病関連自己抗体のTSAb,TRAbは正常範囲であった。超音波検査,造影CTで甲状腺両葉に多数の充実性結節を認め,99mTc甲状腺シンチグラフィで甲状腺両葉に複数のhot noduleを認めたため中毒性多結節性甲状腺腫と診断した。高齢であること,無症状であることから経過観察が行われていたが,甲状腺機能の軽度悪化を認め,拡張型心筋症に伴う心不全の既往があることを考慮して甲状腺全摘術を行った。切除組織...

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Published in四国医学雑誌 Vol. 79; no. 1.2; pp. 117 - 122
Main Authors 橋本, 新一郎, 法村, 尚子, 三浦, 一真, 藤本, 啓介, 監崎, 孝一郎, 澤田, 徹, 寒川, 睦子, 久保, 尊子, 矢島, 俊樹, 紺谷, 桂一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 徳島医学会 2023
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ISSN0037-3699
2758-3279
DOI10.57444/shikokuactamedica.79.1.2_117

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Summary:症例は80歳代女性。既往歴に拡張型心筋症あり。4年前に心不全を発症したが治療により病状は安定していた。1年前より無症状の甲状腺腫瘍と潜在性甲状腺機能亢進症のため当院内科にて経過観察を行っていた。バセドウ病関連自己抗体のTSAb,TRAbは正常範囲であった。超音波検査,造影CTで甲状腺両葉に多数の充実性結節を認め,99mTc甲状腺シンチグラフィで甲状腺両葉に複数のhot noduleを認めたため中毒性多結節性甲状腺腫と診断した。高齢であること,無症状であることから経過観察が行われていたが,甲状腺機能の軽度悪化を認め,拡張型心筋症に伴う心不全の既往があることを考慮して甲状腺全摘術を行った。切除組織の病理検査では,最大径2mmの複数個の腺腫様甲状腺腫を認めた。偶発的に2mm大の乳頭癌1個も認めた。術後,甲状腺ホルモンは速やかに正常化し,現在2年経過した。 本症例は高齢患者で拡張型心筋症の既往もあったため,速やかに甲状腺機能制御が可能な外科的治療が必要と考えられた。 甲状腺腫瘍の中で,甲状腺ホルモンを産生・分泌する結節があり,autonomously functioning thyroid nodule(AFTN)と称する。ヨード不足があまりないわが国では比較的まれな病態である。AFTNは甲状腺結節病変の0.7%,甲状腺中毒症の0.3%を占めると報告されている1,2)。結節が複数ある場合はToxic multinodular goiter(TMNG)と称される。今回,心不全の既往を有する高齢のTMNG症例に対して甲状腺全摘術を行ったので報告する。
ISSN:0037-3699
2758-3279
DOI:10.57444/shikokuactamedica.79.1.2_117