腹水を主症状として発症した全身性エリテマトーデスの1症例

SLEが漿膜炎により,多量の腹水を呈することはきわめてまれである.われわれは腹水を主症状として発症したSLEを経験したので報告する.腹水中の補体価(CH50)は10μg/ml以下と血清19.1μg/mlに比べ著明に低下し, FANAは血清320×に対して腹水は80×を示した.免疫複合体(Clq-IC)は血清2.0μg/mlに対して,腹水は6.1μg/mlと高値であった.このことは,局所で免疫複合体が形成され,組織障害性に作用したことを示唆していた. FANAが血清より腹水で低値を示したことは,免疫複合体形成に消費されたためと考えた.一方,モノクローナル抗体を用いたT細胞サブセットでは腹水中のO...

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Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 7; no. 3; pp. 189 - 195
Main Authors 原, まさ子, 廣瀬, 恒, 法岡, 健一, 栗田, 明, 中村, 治雄, 関, 修司, 安田, 清美, 宮川, 浩, 木谷, 敦, 廣瀬, 立夫, 川越, 光博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 1984
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ISSN0911-4300
1349-7413
DOI10.2177/jsci.7.189

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Summary:SLEが漿膜炎により,多量の腹水を呈することはきわめてまれである.われわれは腹水を主症状として発症したSLEを経験したので報告する.腹水中の補体価(CH50)は10μg/ml以下と血清19.1μg/mlに比べ著明に低下し, FANAは血清320×に対して腹水は80×を示した.免疫複合体(Clq-IC)は血清2.0μg/mlに対して,腹水は6.1μg/mlと高値であった.このことは,局所で免疫複合体が形成され,組織障害性に作用したことを示唆していた. FANAが血清より腹水で低値を示したことは,免疫複合体形成に消費されたためと考えた.一方,モノクローナル抗体を用いたT細胞サブセットでは腹水中のOKT+ T cellが51.8%と著増していた. SLEによる漿膜炎の原因に,免疫複合体とともに細胞障害性T細胞がなんらかの役割を演じていることを示唆する所見であった. この腹水は,大量のprednisoloneにより完全に消失した.
ISSN:0911-4300
1349-7413
DOI:10.2177/jsci.7.189