顎機能異常者の脳波 (α波) の1/fゆらぎ解析

「I. 緒言」 現代社会で頻繁に遭遇する心理, 社会的ストレスは, 心理, 精神面を不安定とさせるのみでなく, 全身あるいは局所のさまざまな機能や組織に影響を及ぼすことが示唆されている. それは, 社会情勢の急速な変化に伴ってますます増加している精神的緊張や不安さらには環境の変化といった心的要因と関連があることが示唆されている疾病, すなわち医科領域では内部環境要因である循環器系疾患(高血圧, 狭心症)や消化器系疾患(胃潰瘍, 肝炎, 癌)などが, そして顎口腔領域においては顎機能異常, 舌疼痛症, 口腔粘膜疾患(アフター性口内炎, 偏平苔癬)などが増加傾向を示している1~4)ことにも表れてい...

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Published in日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 43; no. 3; pp. 457 - 463
Main Authors 倉知, 正和, 岡, 孝典, 山村, 善治, 山仲, 徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本補綴歯科学会 10.06.1999
日本補綴歯科学会
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ISSN0389-5386
1883-177X
DOI10.2186/jjps.43.457

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Summary:「I. 緒言」 現代社会で頻繁に遭遇する心理, 社会的ストレスは, 心理, 精神面を不安定とさせるのみでなく, 全身あるいは局所のさまざまな機能や組織に影響を及ぼすことが示唆されている. それは, 社会情勢の急速な変化に伴ってますます増加している精神的緊張や不安さらには環境の変化といった心的要因と関連があることが示唆されている疾病, すなわち医科領域では内部環境要因である循環器系疾患(高血圧, 狭心症)や消化器系疾患(胃潰瘍, 肝炎, 癌)などが, そして顎口腔領域においては顎機能異常, 舌疼痛症, 口腔粘膜疾患(アフター性口内炎, 偏平苔癬)などが増加傾向を示している1~4)ことにも表れている. このように, 各種疾病の発症および経過に個人の精神心理的要因が関与しているとすれば, その診断および治療を行う上で, 患者の精神・心理的特性を把握するための診査項目を加えることが必要不可欠なものであることが理解できる. 一般に, 個人の精神心理状態の把握は各種の心理テストによって, あるいは情感が中枢の活動であると同時に自律系, 運動系の活動にも影響を及ぼす5)ことから, 比較的容易に測定が可能である自律系を中枢とした末梢反応(心拍, 呼吸, 脈波, 皮膚電位などの変化)を指標とした間接的方法によって行われているのが現状である. しかし前者の心理テストには, その施行が患者に心理精神的負荷を与える要因になりうるなどの問題点もあることから, 後者の自律系を中心とした末梢反応を指標とした方法が理想的と考えるも, これらには変動要因が多くて必ずしも精神心理変化を明確に反映しているともいえないようである6,7). 一方, 最近になって鈴木ら8), 吉田ら9,10)は, 脳波(α波)の周波数リズムのゆらぎが, 生体個々の心理(快一不快感, 気分)に呼応して変化することを報告し, また当教室でも1/fゆらぎを歯科領域における診査, 診断に応用することを目的として一連の研究を行ってきた. 本研究は, 顎機能異常者の精神心理特性を, 生理指標とした脳波(α波)周波数の“1/fゆらぎ11,12)”解析と, 心理指標とした2種類の心理テストによって検討したものである.
ISSN:0389-5386
1883-177X
DOI:10.2186/jjps.43.457