抗HPA-5b (Bra) 抗体を検出した輸血ならびに妊娠歴のない全身性エリテマトーデス (SLE) の1例

血小板抗原の一つBra/Brb抗原系はKiefelら1)によって1988年に報告され, その特異抗体の抗HPA-5b(Bra)抗体はこれまで輸血2)や妊娠3)に伴って産生された. しかし, われわれは輸血や妊娠歴のない全身性エリテマトーデス(SLE)の患者にこの抗体を検出し, その産生機序を考える上で興味ある症例と考えたので報告する. 症例報告 患者:H. K., 20歳, 女性, SLE. 主訴:出血斑. 既往歴:特記することはない. 妊娠歴, 輸血歴はない. 家族歴:母に子宮癌. 現病歴:1982年(11歳時)3月, 両手指先と右足底部に点状出血斑が出現, 近医にて血小板減少(43,000...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 38; no. 4; pp. 582 - 584
Main Authors 石田, 萠子, 大西, 修司, 安永, 幸二郎, 大久保, 進
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 1992
日本輸血学会
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ISSN0546-1448
1883-8383
DOI10.3925/jjtc1958.38.582

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Summary:血小板抗原の一つBra/Brb抗原系はKiefelら1)によって1988年に報告され, その特異抗体の抗HPA-5b(Bra)抗体はこれまで輸血2)や妊娠3)に伴って産生された. しかし, われわれは輸血や妊娠歴のない全身性エリテマトーデス(SLE)の患者にこの抗体を検出し, その産生機序を考える上で興味ある症例と考えたので報告する. 症例報告 患者:H. K., 20歳, 女性, SLE. 主訴:出血斑. 既往歴:特記することはない. 妊娠歴, 輸血歴はない. 家族歴:母に子宮癌. 現病歴:1982年(11歳時)3月, 両手指先と右足底部に点状出血斑が出現, 近医にて血小板減少(43,000/μl)を指摘され, 同年3月特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の疑いにて当院小児科に入院となる. この間, 輸血を受けたことはない. 入院時検査成績(表):血小板数3.9万/μlで, 抗核抗体と抗DNA抗体は陽性であったが, 凝固検査は正常であった. 免疫血液検査:患者の血液型はO型, Rh(D)陽性, 直接, 間接抗グロブリン試験はともに陰性で, 抗赤血球抗体は陰性であった. 抗血小板抗体は, 1982年の発症時は混合受身凝集法(MPHA法), 螢光抗体法(PSIFT法)ともに陰性であったが, 1984年にはPSIFT法のみ弱陽性, その後1991年3月にはMPHA法, anti-PLT, オリビオ, MPHA法が陽性となり, さらにクロロキン処理MPHA法でも陽性であったことからIgG型の抗血小板特異抗体が疑われた.
ISSN:0546-1448
1883-8383
DOI:10.3925/jjtc1958.38.582