陶石類の品質試驗及その應用
新しく發見され又は現在尚一般に使用されてゐない陶石類の品質試驗を行ふに當つて比較對照に便するため高浜産の天草陶石について試驗を行ひ且つ既報の文献について考察した。次にその概要を摘録する。 天草陶石は石英粗面岩の半分解物で質可なり堅硬な白色の石基中に石英と白粉粒状物 (長石が磁土化したものか或は岩石中の氣孔へ磁土が沈漬したものと思ふ。) とが點在する斑状構造を不規則な角塊状をした岩石である。これを微細に粉碎すれば可塑性を有し單味では轆轤成形稍々困難であるが, 他の原料を補足すれば是を主原料として容易に磁器製造が可能であり, スタンパー粉碎物より水簸して得た坏土は轆轤成形も充分可能で單味で磁器を製...
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Published in | 大日本窯業協會雑誌 Vol. 44; no. 522; pp. 394 - 400 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本セラミックス協会
1936
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0366-9998 1884-2119 |
DOI | 10.2109/jcersj1892.44.394 |
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Summary: | 新しく發見され又は現在尚一般に使用されてゐない陶石類の品質試驗を行ふに當つて比較對照に便するため高浜産の天草陶石について試驗を行ひ且つ既報の文献について考察した。次にその概要を摘録する。 天草陶石は石英粗面岩の半分解物で質可なり堅硬な白色の石基中に石英と白粉粒状物 (長石が磁土化したものか或は岩石中の氣孔へ磁土が沈漬したものと思ふ。) とが點在する斑状構造を不規則な角塊状をした岩石である。これを微細に粉碎すれば可塑性を有し單味では轆轤成形稍々困難であるが, 他の原料を補足すれば是を主原料として容易に磁器製造が可能であり, スタンパー粉碎物より水簸して得た坏土は轆轤成形も充分可能で單味で磁器を製造し得る他に類例の尠い特徴を有つてゐて, 陶石類中最も優良な我國獨特の原料とされ, 天草全島の陶石年産額は3萬瓲 (5000萬斤) を下らないであらう。 眞の比重は2.68 (撰磨石, 以下1數値は同石), 2.66-2.69 (撰磨石~捨石, 以下~印は同), 見掛の比重は2.37, 有孔度は11.6%, 耐壓強度は1.10×103kg/cm2である。顯微鏡下に見得る造岩鑛物は石英, 絹雲母, 長石, 磁土及少量の葉蝋石にて, 長石は著しく分解されてゐる。各等級の成分範圍は次のやうである。 鐵分の存在は已むを得ないとしてもチタンが痕跡に過ざないのは特筆すべきである。耐火度はSK 26-27弱にて, トロンメル粉碎物の半乾式壓搾 (400kg/cm2) 成形體のSK 10及12に於ける燒縮率は各4.3-8.3%及5.7-8.6%で燒成物は〓器又は磁器質である。プルフリッヒフォトメーターによる「白さ」の測定では還元燒成の方が酸化燒成より優つてゐる結果となつた。又還元焔SK 10→12では白含有量 (59-49%)→(66-56%) と増加する傾向が示され「燒きぬけば白くなる」と云ふ現象が數字的に立證された。鏡檢の結果から考察すると當所報告第8及9號 (天然合成兩天草素地の比較, 赤塚幹也, 昭和5年及磁器素地の物理的性質及機械的強度, 赤塚幹也, 昭和6年) に發表されたやうに, 化學成分を同じうする天然, 合成, 兩天草素地が燒成の結果に於て可なり性質の差違を生ずるのは, 他にも原因はあらうが, 主として兩者が鑛物成分を異にするためであることが容易に納得された。即ち熔劑としその長石と絹雲母, 珪酸礬土質原料としての磁土と葉蝋石及化合珪酸と遊離珪酸には當然夫々相違がある。從つて諸鑛物の聚合體である一般陶石類の品質試驗を行ふには其の造岩鑛物を究明せねばならぬことが判つた。かく原料の鑛物成分を知ることは直ちに以て陶磁器類の大なる改良とはならない迄も, 少くとも製品の種類に應じて原料選擇に一層認識を深め最も合理的用途に適用出來る基礎とならうし亦陶石類の比較を行ふに當つても, それ等の性質を一層明かに説明することが出來る。 最近内外幾多の研究から一路發達の途上にある鑛物化學と應用に關する研究並に製造技術とが更により一層進歩した曉には, 同有陶磁器類の構造をして最も安定な人工鑛物或はその聚合體とすることが可能となり; 製品をして理論的に用途と合致した優秀なものにすることが出來るやうになつて, その改良や新製品の創製に資する所が尠くなからうと考へられる。(續) |
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ISSN: | 0366-9998 1884-2119 |
DOI: | 10.2109/jcersj1892.44.394 |