脳死片肺移植後の抗体関連型拒絶反応に対する集学的治療の経験
抗体関連型拒絶反応(AMR)は血中のドナー特異的human leukocyte antigen(HLA)抗体(DSA)の出現に伴うグラフト機能不全として発症し、診療に難渋する病態の一つである。AMRに対する治療として、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)は多数の免疫系細胞に発現するCD抗原に対する抗体を含むポリクローナル抗体薬であり、2014年より肺移植後の急性拒絶反応に対しても保険適用となっている。今回、脳死片肺移植後のAMRに対してATGを用いた集学的治療が奏功した症例を経験したため報告する。症例は50歳の男性。特発性肺線維症に対して脳死右片肺移植を施行した。術後11日目に急性拒絶反応を認めステ...
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Published in | 移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s294_1 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2024
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.59.Supplement_s294_1 |
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Summary: | 抗体関連型拒絶反応(AMR)は血中のドナー特異的human leukocyte antigen(HLA)抗体(DSA)の出現に伴うグラフト機能不全として発症し、診療に難渋する病態の一つである。AMRに対する治療として、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)は多数の免疫系細胞に発現するCD抗原に対する抗体を含むポリクローナル抗体薬であり、2014年より肺移植後の急性拒絶反応に対しても保険適用となっている。今回、脳死片肺移植後のAMRに対してATGを用いた集学的治療が奏功した症例を経験したため報告する。症例は50歳の男性。特発性肺線維症に対して脳死右片肺移植を施行した。術後11日目に急性拒絶反応を認めステロイドパルス療法を施行したが、de novo DSA陽性であったためpossible AMRと診断し、ATGや血漿交換、免疫グロブリン投与による治療を行った。5回のATG投与後にDSAの抗体価上昇(B44: 6575→12542)を認めたため、合計12回のATG投与を行い症状の改善とDSAの減少(5498)を得た。経過中にサイトメガロウイルス陽転化や細菌性肺炎を認めたが薬物療法により改善した。AMR発症時に移植肺の血流が高度に低下し気管支吻合部狭窄をきたしたが、移植後4ヵ月目より繰り返したバルーン拡張術と、その後の半年間のシリコンステント留置により軽快した。片肺移植後のAMRでは自己肺合併症を発症する可能性や自己肺への血流シフトにより発症する移植片の気管支合併症にも注意する必要があるため 、当院の治療戦略を交えて報告する。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.59.Supplement_s294_1 |