第VIII凝固因子の適切な投与により安全に施行できた血友病Aを有した膵腎同時移植術の一例
背景:血友病Aは第VIII凝固因子(FVIII)の欠失による凝固異常を呈する遺伝性疾患であり、侵襲的処置には適切な凝固因子の管理が必要である。今回、血友病Aを有する糖尿病性腎症に対して周術期にFVIII製剤を補充し、膵腎同時移植術(SPK)を施行した最初の一例報告をする。病歴:52才男性。2歳で血友病Aと診断され、必要に応じてFVIII補充療法を受けていた。25歳で1型糖尿病と診断され、43歳で血液透析を開始した。今回、SPKを予定した。血液凝固検査:PT-INR 1.09、APTT 40秒、FVIII活性4%、FVIIIインヒビター陰性。FVIIIの周術期管理:FVIII製剤を術前に5000...
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Published in | 移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s340_2 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2024
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.59.Supplement_s340_2 |
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Summary: | 背景:血友病Aは第VIII凝固因子(FVIII)の欠失による凝固異常を呈する遺伝性疾患であり、侵襲的処置には適切な凝固因子の管理が必要である。今回、血友病Aを有する糖尿病性腎症に対して周術期にFVIII製剤を補充し、膵腎同時移植術(SPK)を施行した最初の一例報告をする。病歴:52才男性。2歳で血友病Aと診断され、必要に応じてFVIII補充療法を受けていた。25歳で1型糖尿病と診断され、43歳で血液透析を開始した。今回、SPKを予定した。血液凝固検査:PT-INR 1.09、APTT 40秒、FVIII活性4%、FVIIIインヒビター陰性。FVIIIの周術期管理:FVIII製剤を術前に5000単位ボーラス投与し、手術中は200単位/時で持続投与した。術前から血中APTT、FVIII活性を適宜測定し術中はFVIII活性を80%以上、手術後1週間はFVIII活性を30%以上に維持するためにFVIII製剤を持続投与することとした。経過:膵移植片を右腸骨窩に、腎移植片を左腸骨窩にそれぞれ移植した(出血量:800ml)。FVIII製剤は上記プロトコルに準じて投与し、術後19日目に持続投与から週2回のボーラス投与に切り替えた。出血性合併症はなく回復し、移植後39日目に退院した。現在、術後12ヵ月が経過し、膵機能、腎機能は良好に経過している。結論:血友病Aを合併した糖尿病性腎症に対する脳死膵腎同時移植は、周術期の凝固第VIII因子補充により出血性合併症を認めることなく安全に施行可能であった。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.59.Supplement_s340_2 |