遅発性放射線障害が疑われる首下がり症候群の一例

はじめに:首下がり症候群は頚椎の後弯により頭部が下垂する疾患である.首下がり症候群をきたしうる疾患は多彩であり,神経筋原性疾患やパーキンソン病などがある.近年,悪性腫瘍に対する治療の進歩はめざましく,長期生存する患者が増加しているが,その一方で放射線治療の晩期合併症として,首下がり症候群の報告が散見されるようになっている.我々は下咽頭癌に対して放射線治療された後,晩期合併症として首下がり症候群が生じた症例を経験した.症例:65歳.男性.53歳時に下咽頭癌に対して抗がん剤加療,左頚部郭清術と,強化療法として放射線照射の既往歴があった.61歳時に頚部痛,63歳時に首下がりが出現した.神経学的に無症...

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Published inJournal of Spine Research Vol. 16; no. 4; pp. 726 - 731
Main Authors 富田, 浩之, 森下, 和明, 今釜, 史郎, 大島, 和馬, 都島, 幹人, 長谷, 康弘, 金村, 徳相, 大山, 博己, 大内田, 隼, 中島, 宏彰
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会 20.04.2025
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ISSN1884-7137
2435-1563
DOI10.34371/jspineres.2025-0405

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Summary:はじめに:首下がり症候群は頚椎の後弯により頭部が下垂する疾患である.首下がり症候群をきたしうる疾患は多彩であり,神経筋原性疾患やパーキンソン病などがある.近年,悪性腫瘍に対する治療の進歩はめざましく,長期生存する患者が増加しているが,その一方で放射線治療の晩期合併症として,首下がり症候群の報告が散見されるようになっている.我々は下咽頭癌に対して放射線治療された後,晩期合併症として首下がり症候群が生じた症例を経験した.症例:65歳.男性.53歳時に下咽頭癌に対して抗がん剤加療,左頚部郭清術と,強化療法として放射線照射の既往歴があった.61歳時に頚部痛,63歳時に首下がりが出現した.神経学的に無症候であったため原疾患の精査を先行するも診断に至らず,徐々に首下がりの増悪,両上肢の筋力低下や歩行時のふらつきなどの脊髄障害が出現したため,65歳時に後方除圧固定術を行った.術後も依然として原因が不明なため,放射線障害が原因と判断した.結語:今後も医療の発展により,がんサバイバーが増加することが見込まれ,放射線障害による首下がり患者が増加する可能性があり,首下がり症候群の原因の一つとして留意する必要がある.
ISSN:1884-7137
2435-1563
DOI:10.34371/jspineres.2025-0405