ドナー治療から免疫寛容誘導を目指すミニブタを用いた移植実験
免疫寛容誘導は長期免疫抑制剤の負担を軽減する究極の戦略であるが、通常、導入時にレシピエント負担が伴うため、ドナーに対する治療から免疫寛容誘導を導く新たな戦略開発が期待される。我々は、一酸化炭素(CO)の抗炎症・細胞保護作用に基づくクラウン系ミニブタを用いたMHC不適合間肺移植実験から、(1)周術期の短期低濃度CO投与(ドナー180分、レシピエント390分)はドナー投与が効果の鍵となること(ドナーとレシピエントいずれもCOの生着47±7日(n=6)、ドナーとレシピエント両者CO吸入の生着82±13日(n=5)、ドナーのみCO吸入の生着97±26日(n=4)、レシピエントのみCO吸入の生着54±6...
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Published in | 移植 Vol. 59; no. Supplement; p. s170_2 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2024
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ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.59.Supplement_s170_2 |
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Summary: | 免疫寛容誘導は長期免疫抑制剤の負担を軽減する究極の戦略であるが、通常、導入時にレシピエント負担が伴うため、ドナーに対する治療から免疫寛容誘導を導く新たな戦略開発が期待される。我々は、一酸化炭素(CO)の抗炎症・細胞保護作用に基づくクラウン系ミニブタを用いたMHC不適合間肺移植実験から、(1)周術期の短期低濃度CO投与(ドナー180分、レシピエント390分)はドナー投与が効果の鍵となること(ドナーとレシピエントいずれもCOの生着47±7日(n=6)、ドナーとレシピエント両者CO吸入の生着82±13日(n=5)、ドナーのみCO吸入の生着97±26日(n=4)、レシピエントのみCO吸入の生着54±6日(n=3))、(2)脳死ドナーに対する180分間CO吸入による有意な生着延長効果を明らかにした(非吸入群の生着:26±5日(n=3)、吸入群の生着:82±13日(n=4))。いずれの実験でも、ドナーCO吸入がグラフト内の炎症性サイトカイン発現抑制や虚血再灌流の抑制を介し障害て移植肺の急性細胞・液性拒絶反応を抑制することが示された。さらに、ドナー治療による移植肺生着延長効果は、抗炎症性作用を有する他の治療法(硫化水素、アデノシンA2A受容体抗体アゴニスト)でも確認されている。今後は、生検検体の空間的遺伝子解析を含めた新たな評価を通じて、ドナーの短期治療がグラフト長期予後を導く過程を明らかにすることにより、ドナー治療から免疫寛容誘導を導く戦略の開発につなげたい。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.59.Supplement_s170_2 |