下行結腸領域にて辺縁動脈が欠損したpersistent descending mesocolonの1例
Persistent descending mesocolon(PDM)は,左側結腸が壁側腹膜と癒合せず,下行結腸が内側に偏位する固定異常である.症例は76歳女性.直腸S状部癌に対して腹腔鏡下高位前方切除術(D3郭清)を予定した.腹腔内を観察したところ,左側結腸が右側へ偏位し,小腸間膜および虫垂と癒着していたことから,PDMと診断した.腹腔内にて下腸間膜動脈(IMA)根部,下腸間膜静脈,左結腸動脈(LCA)の順に切離し,体外操作へ移行したところ,LCAとS状結腸動脈第1枝とをつなぐ辺縁動脈が欠損し,LCAから直動脈が分岐していることが判明した.腸管壊死を防ぐため,左結腸動脈を処理した高さで下行...
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Published in | 日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 78; no. 7; pp. 292 - 297 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人日本大腸肛門病学会
2025
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Subjects | |
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ISSN | 0047-1801 1882-9619 |
DOI | 10.3862/jcoloproctology.78.292 |
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Summary: | Persistent descending mesocolon(PDM)は,左側結腸が壁側腹膜と癒合せず,下行結腸が内側に偏位する固定異常である.症例は76歳女性.直腸S状部癌に対して腹腔鏡下高位前方切除術(D3郭清)を予定した.腹腔内を観察したところ,左側結腸が右側へ偏位し,小腸間膜および虫垂と癒着していたことから,PDMと診断した.腹腔内にて下腸間膜動脈(IMA)根部,下腸間膜静脈,左結腸動脈(LCA)の順に切離し,体外操作へ移行したところ,LCAとS状結腸動脈第1枝とをつなぐ辺縁動脈が欠損し,LCAから直動脈が分岐していることが判明した.腸管壊死を防ぐため,左結腸動脈を処理した高さで下行結腸を切離し,脾彎曲を授動後に吻合を実施した.PDMを有する症例では血管分布異常を認めることがあり,辺縁動脈欠損の可能性も含めた解剖学的特徴を理解し,慎重な手術操作を心がけることが肝要である. |
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ISSN: | 0047-1801 1882-9619 |
DOI: | 10.3862/jcoloproctology.78.292 |