化学シャペロン作用を介するベプリジルのKv1.5チャネル蛋白安定化作用

【背景】ベプリジルはpost-translational modification作用によりチャネル蛋白の安定性を増すことが報告されているが,その詳細な機序については不明な点が多い.【目的と方法】われわれは,Kv1.5チャネル蛋白に及ぼすベプリジルの効果を培養HEK293細胞の発現系を用いて生化学的に検討した.【結果】ベプリジルは用量依存的(0.1~10μM)にHEK293細胞でのKv1.5チャネル蛋白発現を有意に増加させた.ベプリジル(3μM)は小胞体・ゴルジ体ならびに細胞膜でのKv1.5蛋白の発現を増加させ,この作用は細胞分画実験からも確認された.この発現増加が蛋白の安定化を介しているかを...

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Published in心電図 Vol. 30; no. 2; pp. 132 - 141
Main Authors 久留, 一郎, 矢野, 明暁, 井上, 義明, 浦島, 直, 飯塚, 和彦, 桑原, 成政, 丁, 亜光, 足立, 正光, 三明, 淳一朗, 小倉, 一能, 加藤, 克, 李, 佩俐, 井川, 修, 岩井, ちさと
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本不整脈心電学会 2010
日本心電学会
Subjects
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ISSN0285-1660
1884-2437
DOI10.5105/jse.30.132

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Summary:【背景】ベプリジルはpost-translational modification作用によりチャネル蛋白の安定性を増すことが報告されているが,その詳細な機序については不明な点が多い.【目的と方法】われわれは,Kv1.5チャネル蛋白に及ぼすベプリジルの効果を培養HEK293細胞の発現系を用いて生化学的に検討した.【結果】ベプリジルは用量依存的(0.1~10μM)にHEK293細胞でのKv1.5チャネル蛋白発現を有意に増加させた.ベプリジル(3μM)は小胞体・ゴルジ体ならびに細胞膜でのKv1.5蛋白の発現を増加させ,この作用は細胞分画実験からも確認された.この発現増加が蛋白の安定化を介しているかを明らかにするためにシクロヘキサミド処理によるチェイス実験を行ったところ,ベプリジル(3μM)はプロテアソーム阻害薬であるMG132(10μM)と同様にKv1.5蛋白分解速度を遅延させた.このベプリジルによる蛋白安定化作用はシミュレーション上でも,また酵素活性への効果からもプロテアソーム活性の抑制を介さない可能性が示唆された.非常に速い活性化過程をもつ遅延整流K電流(IKur)阻害薬である4APを前処置するとベプリジルのKv1.5増加作用が消失した.【結語】ベプリジルはプロテアソーム活性抑制を介さずに化学シャペロンとしてKv1.5蛋白を安定化できる.
ISSN:0285-1660
1884-2437
DOI:10.5105/jse.30.132