腎機能の性差はどう作られる
男性と女性の違いとして骨格・筋肉量などが分かりやすいものだが、内臓にも差は存在している。本発表では腎臓に着目するが、腎臓における性差は様々な 報告がある。例えば透析患者は 2 倍ほど男性で多いことが知られており、慢性 腎臓病が男性で急速に悪化すること理由と考えられている。腎臓の主要な役割は、血液中の老廃物を濾過し、尿を産生することで体液の 恒常性を維持することにある。尿の産生過程を見ていくと、まず糸球体による血 液の濾過により原尿が作られる、続けて、原尿が尿細管を通る過程で様々な分 子の分泌・再吸収が行われて、尿となり体外へ排泄されるが、それぞれの過程 で性差が知られている。糸球体では推定糸球...
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Published in | 看護薬理学カンファレンス p. ES2-2 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本薬理学会
2025
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Summary: | 男性と女性の違いとして骨格・筋肉量などが分かりやすいものだが、内臓にも差は存在している。本発表では腎臓に着目するが、腎臓における性差は様々な 報告がある。例えば透析患者は 2 倍ほど男性で多いことが知られており、慢性 腎臓病が男性で急速に悪化すること理由と考えられている。腎臓の主要な役割は、血液中の老廃物を濾過し、尿を産生することで体液の 恒常性を維持することにある。尿の産生過程を見ていくと、まず糸球体による血 液の濾過により原尿が作られる、続けて、原尿が尿細管を通る過程で様々な分 子の分泌・再吸収が行われて、尿となり体外へ排泄されるが、それぞれの過程 で性差が知られている。糸球体では推定糸球体濾過率(eGFR)が男女で基準 が違う。尿細管での分泌・再吸収は様々な分子ごとに異なった輸送体がその任 を担っており、それらの量が異なることが一部の輸送体で見つかっている。しか しながら、すべての輸送体に調べられておらず、すべての性差が明らかになった とは言えない状態である。ところで、性差を作り出す要因として性ホルモンが有名であるが、それだけで は説明できないことも多い。例えば、性腺が成熟する前の子供や、閉経後の高 齢者においても性差が存在することである。そこで、近年では性染色体(XXと XY)による影響も研究の対象となっている。この性染色体の影響はY 染色体 に関わった話だけでない。女性の場合 X 染色体が 2 つあるため、片方のX 染色 体が働かない状態(不活化)となっているが、一部の遺伝子はこの不活化から 逃れ、男性に比べ、2 倍の量のタンパク質を作り出したりする。このように XXと XYの違いに加え、性ホルモンの違いが複雑に絡まって出来上がっているのが 性差である。そこで我々は以上のことを踏まえた上で、腎臓の性差形成メカニズムの一端 を明らかにすることを目的とし、研究を行なった。そこで得られた結果から、ど のように腎臓の性差が作られているかの一端をご紹介する。ここで明らかになっ たことは腎臓関連疾患の原因を推定し、予防など役立たせることができる。また、 腎臓は薬物の排泄にも関わるため、腎臓における副作用の解明にもつながる。 |
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Bibliography: | 2025.1_ES2-2 |
ISSN: | 2435-8460 |
DOI: | 10.34597/npc.2025.1.0_ES2-2 |