症例 純型肺動脈閉鎖症の1剖検例

純型肺動脈閉鎖症TypeIは早期より心不全をきたし,かつ外科的根治術が困難であることより極めて予後不良の疾患である.我々が経験した症例においても,出生直後よりチアノーゼが出現し,再三のシャント作成術,BAS,弁切開術等の治療の甲斐なく生後51日目に死亡した. 剖検時,患児の肺動脈弁は膜様に閉鎖しており,また三尖弁も弁尖が癒着しスリット状の間隙を有するのみであった.右室壁は著明に肥厚し内腔は狭小化していたが,大動脈や肺動脈幹等の主要血管系や動脈管には特に異常を認めなかった.この肺動脈弁および三尖弁を組織学的に検索したところ,両者ともに弁中央部付近の弁尖癒合部に結節状の線維性肥厚と線維芽細胞の増生...

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Published in心臓 Vol. 19; no. 12; pp. 1403 - 1407
Main Authors 大須賀, 洋, 福西, 亮, 伊藤, 孝, 北條, 禎久, 杉田, 敦郎, 植田, 規史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1987
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.19.12_1403

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Summary:純型肺動脈閉鎖症TypeIは早期より心不全をきたし,かつ外科的根治術が困難であることより極めて予後不良の疾患である.我々が経験した症例においても,出生直後よりチアノーゼが出現し,再三のシャント作成術,BAS,弁切開術等の治療の甲斐なく生後51日目に死亡した. 剖検時,患児の肺動脈弁は膜様に閉鎖しており,また三尖弁も弁尖が癒着しスリット状の間隙を有するのみであった.右室壁は著明に肥厚し内腔は狭小化していたが,大動脈や肺動脈幹等の主要血管系や動脈管には特に異常を認めなかった.この肺動脈弁および三尖弁を組織学的に検索したところ,両者ともに弁中央部付近の弁尖癒合部に結節状の線維性肥厚と線維芽細胞の増生を認め,特に三尖弁には毛細血管の増生する所見が見られた. 純型肺動脈閉鎖症のうち主要血管系や動脈管に異常を伴わないものでは,器官形成の毅階では正常な血行動態にあったと考えられるものがあり,その発生原因は器官形成後の炎症等の変化であるとする説がある.今回我々が経験した症例における三尖弁および肺動脈弁の変化は,胎生期の炎症性変化の存在を示唆する所見であった.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.19.12_1403