小腸に発症したt(11;18)(q21;q21)/BIRC3-MALT1陽性節外性マージナルゾーンリンパ腫/MALT リンパ腫の1 例

症例: 78歳女性.多量下血をきたし緊急入院.CTで近位回腸に全周性の壁肥厚と周囲リンパ節の腫大を認めた.シングルバルーン小腸内視鏡で近位回腸に出血を伴う不整な潰瘍病変を認めた.開腹小腸切除術及び腸間膜リンパ節切除術を実施した.切除した小腸の病理標本では, 中型のセントロサイト様細胞や単球様細胞が反応性濾胞の辺縁に増生し, これらのリンパ腫細胞は小腸壁全層および周囲脂肪織に浸潤していた.フローサイトメトリー解析では, リンパ腫細胞はCD5-, CD10-, CD19+, CD20+, CD21+, CD22+weak, CD23-で, 細胞表面に免疫グロブリンα/λを発現していた.核型は46,...

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Published in天理医学紀要 Vol. 17; no. 2; pp. 81 - 89
Main Authors 大野, 仁嗣, 飯岡, 大, 福島, 正大, 宮島, 真治, 奥村, 敦子, 本田, 浩太郎, 本庄, 原, 中川, 美穂
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所 2014
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ISSN1344-1817
2187-2244
DOI10.12936/tenrikiyo.17-017

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Summary:症例: 78歳女性.多量下血をきたし緊急入院.CTで近位回腸に全周性の壁肥厚と周囲リンパ節の腫大を認めた.シングルバルーン小腸内視鏡で近位回腸に出血を伴う不整な潰瘍病変を認めた.開腹小腸切除術及び腸間膜リンパ節切除術を実施した.切除した小腸の病理標本では, 中型のセントロサイト様細胞や単球様細胞が反応性濾胞の辺縁に増生し, これらのリンパ腫細胞は小腸壁全層および周囲脂肪織に浸潤していた.フローサイトメトリー解析では, リンパ腫細胞はCD5-, CD10-, CD19+, CD20+, CD21+, CD22+weak, CD23-で, 細胞表面に免疫グロブリンα/λを発現していた.核型は46,XX,t(11;18)(q21;q21)/47,idem,+der(11)t(11;18)(q21;q21) で, 間期核FISH解析でBIRC3-MALT1融合シグナルを認めた.骨髄穿刺標本と生検標本の形態観察では明らかなリンパ腫細胞は認めなかったが, スメア標本を用いた間期核FISHでBIRC3-MALT1融合シグナル陽性の形質細胞様リンパ腫細胞を1.1%認めた.血清免疫固定法ではIgA-λ型のM蛋白が認められた. 治療経過: 小腸に発症した節外性マージナルゾーンリンパ腫/MALTリンパ腫と診断した.周囲腸間膜リンパ節と骨髄への進展を認めたことから, 臨床病期はstage IVに該当した.リツキシマブ単剤(375 mg/m2)治療を6サイクル実施した.消化管病変やリンパ節病変の再発は認めていないが, 血清IgAレベルは高値が続いている. 考察: MALTリンパ腫は消化管に好発するが, 本例では近位回腸に孤発性の病変を認めた.限られた既報告では,小腸発症例はt(11;18)(q21;q21)陽性例が多い.一方, t(11;18)(q21;q21)陽性消化管MALTリンパ腫は, 本症例のように粘膜下組織への浸潤傾向が強いとされている.今後はバルーン内視鏡の普及によって, 小腸MALTリンパ腫の臨床病理学的特徴がより明らかになることが期待される.
ISSN:1344-1817
2187-2244
DOI:10.12936/tenrikiyo.17-017