症例 川崎病後遺症による腎血管性高血圧症に対する経皮経管的腎動脈形成術の1例

川崎病は全身性の血管炎であるが,その末梢動脈病変についての報告は極めて少ない.今回我々は川崎病発病14年目に高血圧が出現した川崎病による腎動脈瘤後の狭窄による腎血管性高血圧症に対して,経皮経管的腎動脈形成術を施行し,良好な結果を得たので報告する. 症例は22歳男性で6歳時に26日間続く発熱のため入院.頸部リンパ節腫脹,両側眼球結膜の充血などの川崎病の症状を呈している.20歳頃より頭痛嘔吐が時々出現し,近医にて高血圧(180/90mmHg)を指摘されている.21歳時心電図にてII,III,aVFの異常Q波と心エコーにて左室下壁の低収縮を認めたため精査入院.冠動脈造影にて左冠動脈近位部に石灰化を伴...

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Published in心臓 Vol. 25; no. 11; pp. 1353 - 1358
Main Authors 黒沢, 治, 三浦, 清春, 大石, 史弘, 西畠, 信, 馬渡, 耕史, 今和泉, 寛寿
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1993
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.25.11_1353

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Summary:川崎病は全身性の血管炎であるが,その末梢動脈病変についての報告は極めて少ない.今回我々は川崎病発病14年目に高血圧が出現した川崎病による腎動脈瘤後の狭窄による腎血管性高血圧症に対して,経皮経管的腎動脈形成術を施行し,良好な結果を得たので報告する. 症例は22歳男性で6歳時に26日間続く発熱のため入院.頸部リンパ節腫脹,両側眼球結膜の充血などの川崎病の症状を呈している.20歳頃より頭痛嘔吐が時々出現し,近医にて高血圧(180/90mmHg)を指摘されている.21歳時心電図にてII,III,aVFの異常Q波と心エコーにて左室下壁の低収縮を認めたため精査入院.冠動脈造影にて左冠動脈近位部に石灰化を伴う冠動脈瘤と狭窄性病変を認めた.右冠状動脈は数珠状の再疎通血管像を認めた.左室造影は下側壁の低収縮を認め右冠動脈が責任冠動脈と考えられた.右腎動脈,左内腸骨動脈に動脈瘤と狭窄を認め,各々石灰化を伴っていた.レノグラムでは右腎機能低下があり腎血管性高血圧症と診断.その原因として川崎病後遺症が考えられた.腎動脈形成術により十分な拡張を得て,血圧は120-130/80-90mmHgと下降した.川崎病により腎血管性高血圧症を起こしたと考えられる症例へ経皮的血管形成術を施行した報告はなく今後の再狭窄,閉塞などの問題も残されており,厳重な経過観察が必要と思われる.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.25.11_1353