6.高齢者の尿路感染

高齢者の尿路感染症の特徴として,加齢や併存疾患に関連する感染防御能の低下や,前立腺肥大症などの尿路の基礎疾患による排尿機能障害にともなった複雑性尿路感染が多くみられることが挙げられる.また,基礎疾患による日常の活動性の低下や障害などにより尿道カテーテルが留置されていることが多く,これらに生じた尿路感染症は難治性であり院内感染症の原因にもなる.さらに尿道カテーテル留置は無症候性細菌尿が高頻度に認められることとも関係しているが,これらは特別なハイリスクグループをのぞいて抗菌薬投与の適応とはならない.一方で自他覚症状に乏しいことから,時に重症化する場合がある.原因菌については,複雑性尿路感染症の頻度...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 47; no. 6; pp. 565 - 568
Main Authors 荒川, 創一, 藤澤, 正人, 田中, 一志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2010
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.47.565

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Summary:高齢者の尿路感染症の特徴として,加齢や併存疾患に関連する感染防御能の低下や,前立腺肥大症などの尿路の基礎疾患による排尿機能障害にともなった複雑性尿路感染が多くみられることが挙げられる.また,基礎疾患による日常の活動性の低下や障害などにより尿道カテーテルが留置されていることが多く,これらに生じた尿路感染症は難治性であり院内感染症の原因にもなる.さらに尿道カテーテル留置は無症候性細菌尿が高頻度に認められることとも関係しているが,これらは特別なハイリスクグループをのぞいて抗菌薬投与の適応とはならない.一方で自他覚症状に乏しいことから,時に重症化する場合がある.原因菌については,複雑性尿路感染症の頻度が高いため大腸菌以外の感染も多く,ほとんどで抗菌薬の曝露歴が有るため耐性菌の頻度も高い.治療に際して想定される菌種に有効な抗菌薬を選択する必要がある.また,重症化した場合には,抗菌化学療法に加え,外科的処置およびそのタイミングが重要となってくる.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.47.565