大腸閉塞を来した腸管子宮内膜症の1例

【症例】36歳女性【主訴】腹痛【現病歴】3日前より排便がなく腹痛も強いため近医を受診し,腹部レントゲンにて腸閉塞が疑われ当科紹介受診となった.【既往歴】左内膜症性嚢胞核出術【経過】第1病日に施行した妊娠反応検査が陽性のため,ひとまず保存的治療を行った.血中HCGが検出感度以下, 腹部超音波検査にて子宮内妊娠も否定され 第3病日に妊娠反応検査陰性が確認された.そこで造影CT施行すると,S状結腸を起点に腸管拡張を認め, 術後癒着性腸閉塞, 腫瘍性腸閉塞, 腸管子宮内膜症が鑑別に上がった. その他に,左付属器由来の42 mm大の嚢胞性病変を認めた. 保存的治療では症状改善が乏しく,狭窄部精査のため下...

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Published in天理医学紀要 Vol. 28; no. 1; pp. 50 - 51
Main Authors 永友 秀, 上尾 太郎, 上林 峻
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所 2025
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ISSN1344-1817
2187-2244
DOI10.12936/tenrikiyo.28-011

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Summary:【症例】36歳女性【主訴】腹痛【現病歴】3日前より排便がなく腹痛も強いため近医を受診し,腹部レントゲンにて腸閉塞が疑われ当科紹介受診となった.【既往歴】左内膜症性嚢胞核出術【経過】第1病日に施行した妊娠反応検査が陽性のため,ひとまず保存的治療を行った.血中HCGが検出感度以下, 腹部超音波検査にて子宮内妊娠も否定され 第3病日に妊娠反応検査陰性が確認された.そこで造影CT施行すると,S状結腸を起点に腸管拡張を認め, 術後癒着性腸閉塞, 腫瘍性腸閉塞, 腸管子宮内膜症が鑑別に上がった. その他に,左付属器由来の42 mm大の嚢胞性病変を認めた. 保存的治療では症状改善が乏しく,狭窄部精査のため下部内視鏡を施行し,S状結腸にスコープの通過困難な狭窄を認めた.同部は発赤浮腫状変化のみであり,腫瘍を認めなかった.検査後に経肛門イレウス管を留置し,症状は改善した.しかしながら,処置後5日目のCTにて依然として狭窄が残存し,またMRIにてS状結腸にT2WIで低信号所見を呈す結節が存在することからイレウス管抜去後の再燃が推察された.そのため,診断的治療目的に第14病日に腹腔鏡下S状結腸切除,左付属器切除術を実施した.狭窄の原因は腸管子宮内膜症であり左付属器も子宮内膜症であった.【考察】 腸管子宮内膜症は,腸管に子宮内膜組織が存在し月経に伴い発育増殖する病態である.エストロゲン依存性慢性炎症の結果,腹痛や下痢,血便,便秘を呈し,時に腸閉塞や消化管穿孔を引き起こす.全子宮内膜症の約10%を占め,S状結腸や直腸が好発部位である. 治療として外科治療が選択されることが多い.その理由は,病変が腸管の筋層や漿膜下に存在するため内視鏡による観察や狭窄部からの生検にて診断できることが少なく術前診断が困難だからである.確定診断例でも,挙児希望症例やホルモン療法不応例の場合,手術適応となる.性成熟期女性の腸閉塞を診た場合,本疾患も鑑別に挙げ,婦人科疾患歴や月経周期と症状の関連につき詳細な問診を行うことで確定診断に近づくと思われる.
ISSN:1344-1817
2187-2244
DOI:10.12936/tenrikiyo.28-011