座長総括
従来口腔癌の治療は手術療法が中心であったが, 新規抗腫瘍薬の開発超選択的動注法の導入, さらに定位照射や粒子線治療も行われるようになり, 手術以外の選択肢も増えてきている. しかしいかに新しい化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy : CCRT)を根治的に行ったとしてもすべての症例で満足な結果が得られるとは限らず, またCRが得られても治療後に再発を認めることも事実である. これらの症例の多くは救済手術が必要となるが, 根治的CCRTが全身的, 局所的に手術を施行する際に不利益となることも考えられる. 今回現在の口腔外科で行われているCCRTとその後の救済手術...
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Published in | 日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 22; no. 3; p. 81 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
2010
日本口腔腫瘍学会 |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-5988 1884-4995 |
DOI | 10.5843/jsot.22.81 |
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Summary: | 従来口腔癌の治療は手術療法が中心であったが, 新規抗腫瘍薬の開発超選択的動注法の導入, さらに定位照射や粒子線治療も行われるようになり, 手術以外の選択肢も増えてきている. しかしいかに新しい化学放射線療法(concurrent chemoradiotherapy : CCRT)を根治的に行ったとしてもすべての症例で満足な結果が得られるとは限らず, またCRが得られても治療後に再発を認めることも事実である. これらの症例の多くは救済手術が必要となるが, 根治的CCRTが全身的, 局所的に手術を施行する際に不利益となることも考えられる. 今回現在の口腔外科で行われているCCRTとその後の救済手術について検討するために本シンポジウムを開催した. 口腔癌に対して近年行われている超選択的動注法を用いた根治的CCRTを行っている4施設においてそれぞれの施設でのCCRTの内容, 症例数, 腫瘍残存・再発症例, 救済手術, 合併症予後などを中心に発表して頂いた. 4 施設での超選択的動注法は大腿動脈よりのSeldinger法が2施設, 浅側頭動脈や後頭動脈よりの逆行性の方法が2施設であり, 使用した抗腫瘍薬はCDDPを中心としているがそれぞれの施設で投与量, 併用薬剤は異なっていた. 4施設において口腔癌治療を行った症例はそれぞれ215例(8年間), 337例(17年間), 478例(10年間), 193例(3年間)であり, その中で根治的CCRTを行った症例はそれぞれ21例(9.8%), 39例(7.9%), 51例(10.7%), 102例(52.8%)の計213例であった. このように各施設で動注CCRTを治療体系に導入はしているものの, その比率は各施設において差があった. 根治的CCRT後に腫瘍の残存, または再発を認めた症例はそれぞれ9例(42.9%), 24例(61.5%), 29例(56.9%), 16例(15.7%)と各施設間で差がみられ, 救済手術が行われた症例は5例(23.8%), 17例(43.6%), 16例(31.4%), 10例(9.8%)の計48例であった. 48例の手術内容は原発部位の切除のみ(再建なし)が14例(29.2%), 頸部郭清術のみが5例(10.4%), 原発部位の切除+頸部郭清術が2例(4.2%), 原発部位の拡大切除+頸部郭清術+再建術が27例(56.3%)であり, 再建術は血管柄付遊離皮弁(骨)が20例, 有茎皮弁が7例であった. 救済手術の合併症は血管翁付遊 離皮弁壊死が5例, 有茎皮弁壊死が1例, 再建プレート感 染が2例, 頸部皮膚壊死が3例, 痩孔形成, 植皮一部壊死などの局所感染が8例であった. 救済手術を行った48例中28例が生存しており, 粗生存率は58.3%であった. このように救済手術後の合併症が多くなるとの一般的予想のごとく, 今回のシンポジウムにおける各施設の結果も全体的にその傾向にあり, 手術計画, 手術手技, 術後管理の重要性がさらに感じられた. |
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ISSN: | 0915-5988 1884-4995 |
DOI: | 10.5843/jsot.22.81 |