症例 2年間に心筋変性の進行を認めたアルコール性心筋症の1例

症例は37歳男性.日本酒5合/日,14年間の大量飲酒歴があり,35歳時うっ血性心不全にて当科に入院した.左室造影上内腔拡大とび漫性壁運動低下を,右室心内膜心筋生検にて心筋細胞の肥大と筋原線維の粗鬆化を認め,アルコール性心筋症と診断した.その後断酒が守られず,2年後に心不全症状を呈し再入院した.断酒と内科的治療により再度心不全症状は改善し,心胸郭比は62%から55%まで縮小したが,左室造影上駆出率は2年前の52%から36%へとより高度に低下していた.心筋生検組織像では2年前に比し心筋細胞の樹枝状分岐とその断裂,筋原線維の融解,消失化が目立ち,より重症な心筋変性像と間質の強い浮腫が認められた.短期...

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Published in心臓 Vol. 28; no. 5; pp. 422 - 426
Main Authors 会沢, 佳昭, 竹中, 孝, 堀本, 和志, 藤原, 正文, 関口, 守衛, 前沢, 秀彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1996
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Summary:症例は37歳男性.日本酒5合/日,14年間の大量飲酒歴があり,35歳時うっ血性心不全にて当科に入院した.左室造影上内腔拡大とび漫性壁運動低下を,右室心内膜心筋生検にて心筋細胞の肥大と筋原線維の粗鬆化を認め,アルコール性心筋症と診断した.その後断酒が守られず,2年後に心不全症状を呈し再入院した.断酒と内科的治療により再度心不全症状は改善し,心胸郭比は62%から55%まで縮小したが,左室造影上駆出率は2年前の52%から36%へとより高度に低下していた.心筋生検組織像では2年前に比し心筋細胞の樹枝状分岐とその断裂,筋原線維の融解,消失化が目立ち,より重症な心筋変性像と間質の強い浮腫が認められた.短期間に進んだ壁運動低下の原因として,アルコール摂取により急速に進行した心筋変性が考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.28.5_422