研究 大動脈弓離断症における動脈管と肺小動脈の組織学的所見

大動脈弓離断症の根治手術にあたっては,手術に際していくつかの解明されるべき問題が存在する.今回,手術後死亡した,CeloriaのB型大動脈弓離断症剖検例を用いておもにPDDTの血管壁と肺小動脈に対して病理組織学的検索を行った.その結果,肺動脈幹と下行大動脈の間のいわゆる動脈管は中膜の部分に弾性線維と平滑筋細胞を欠き,不連続に横走するちぢれたような線維組織で占められ,血管壁は脆弱で成長も期待できないと思われた.したがって,PDDTを伴う大動脈弓離断症では大動脈弓再建に際しては動脈管を使用しないことが望ましいと結論された.また本症例では肺小動脈中膜の著明な肥厚がみられたものの,肺血管の内膜病変は軽...

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Published in心臓 Vol. 13; no. 4; pp. 426 - 431
Main Authors 八巻, 重雄, 鈴木, 康之, 香川, 謙, 加畑, 治, 小野寺, 博則, 東郷, 孝男, 本郷, 忠敬, 関野, 美仁, 佐藤, 茂和, 石沢, 栄次, 堀内, 藤吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1981
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Summary:大動脈弓離断症の根治手術にあたっては,手術に際していくつかの解明されるべき問題が存在する.今回,手術後死亡した,CeloriaのB型大動脈弓離断症剖検例を用いておもにPDDTの血管壁と肺小動脈に対して病理組織学的検索を行った.その結果,肺動脈幹と下行大動脈の間のいわゆる動脈管は中膜の部分に弾性線維と平滑筋細胞を欠き,不連続に横走するちぢれたような線維組織で占められ,血管壁は脆弱で成長も期待できないと思われた.したがって,PDDTを伴う大動脈弓離断症では大動脈弓再建に際しては動脈管を使用しないことが望ましいと結論された.また本症例では肺小動脈中膜の著明な肥厚がみられたものの,肺血管の内膜病変は軽度であった.その機序について本疾患では生直後からの肺高血圧症に対して肺動脈系の中膜は充分に肥厚しうるので血管内圧にも適応ができているのであろうと考察された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.13.4_426