症例 心拍の遅い房室回帰性頻拍中に心房性頻拍によるentrainment現象を認めた間欠性WPW症候群の1症例

心拍の遅い房室回帰性頻拍(AVRT)中にA波の興奮伝播様式の変化を認めた間欠性WPW症候群の1症例を経験した.入院時心電図所見は洞調律でΔ波を認め,V1でrSパターンを示し,その後一過性にΔ波の消失がみられ,間欠性WPW症候群と診断された.頻拍時は,心拍数102/分,II, III, aVFでQRSの直後に陰性P波を認め,narrow QRSの発作性上室頻拍(PSVT)を呈した.臨床電気生理学的検査では,PSVT時の最早期興奮部位は冠静脈洞(CS)で,著明なAH時間の延長を認め,また右室ペーシングによる室房伝導最早期部位はCS入口部で,奇異性心房捕捉現象も認め,AVRTと考えられた.さらに,心...

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Published in心臓 Vol. 26; no. 8; pp. 858 - 863
Main Authors 蔵野, 康造, 宮田, 彰, 馬場, 隆男, 小林, 洋一, 向井, 英之, 丹野, 郁, 梅津, 一彦, 千代田, 和美, 冨田, 昌孝, 中川, 陽之, 神保, 芳宏, 片桐, 敬, 菊嶋, 修示, 矢沢, 卓, 嶽山, 陽一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1994
Subjects
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.26.8_858

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Summary:心拍の遅い房室回帰性頻拍(AVRT)中にA波の興奮伝播様式の変化を認めた間欠性WPW症候群の1症例を経験した.入院時心電図所見は洞調律でΔ波を認め,V1でrSパターンを示し,その後一過性にΔ波の消失がみられ,間欠性WPW症候群と診断された.頻拍時は,心拍数102/分,II, III, aVFでQRSの直後に陰性P波を認め,narrow QRSの発作性上室頻拍(PSVT)を呈した.臨床電気生理学的検査では,PSVT時の最早期興奮部位は冠静脈洞(CS)で,著明なAH時間の延長を認め,また右室ペーシングによる室房伝導最早期部位はCS入口部で,奇異性心房捕捉現象も認め,AVRTと考えられた.さらに,心房早期刺激法によるjump upやHBEのA波が最早期でAH,HA時間ともisoproterenol負荷で短縮するPSVTを認め,房室結節二重伝導路の合併が示唆された.このことより,AVRT中のAH時間延長は順行伝導がslow pathwayを伝導するためと思われた.また本例ではPSVT中のA波の興奮順序がCS-ヒス束(HBE)-下位右房(1LRA)-高位右房(HRA)とCSが最早期興奮部位のPSVTから,HRAのA波がCSのA波よりも徐々に早くなりHRA-1LRA-HBE-CSとHRAが最早期興奮部位のPSVTへと変化し,同時に体表面心電図上のP波も,最初II,IIIで陰性のものが徐々に陽性に変化してゆく過程をとらえ,以後持続した.この現象はAVRTのA波が心房内を伝導する際にHRAのA波にentrainmentされたものと推察された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.26.8_858