症例 アセチルコリンにより梗塞責任冠動脈が顕性化した正常冠動脈を有する急性心筋梗塞の1例
梗塞発症5時間の緊急冠動脈造影(CAG)はほぼ正常で,慢性期CAG・左室造影(LVG)検査時に実施したアセチルコリン(ACh)冠動脈内注入にて前下行枝近位部に高度冠動脈攣縮が誘発され,梗塞責任冠動脈が顕性化した症例を経験したので報告する. 症例は52歳,女性.急性心筋梗塞にて当院集中治療室に入室.入室時心電図所見でII,III,aVF,V2-V6でST上昇を認め,胸痛出現5時間後に緊急CAG・LVGを実施した.冠動脈には有意狭窄および血栓の所見は認めずほぼ正常であった.しかしLVGでは心尖部にdyskinesisが認められた.第40病日に実施したCAGは急性期のそれと類似したが,AChを左右冠...
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Published in | 心臓 Vol. 23; no. 7; pp. 763 - 767 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
1991
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo1969.23.7_763 |
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Summary: | 梗塞発症5時間の緊急冠動脈造影(CAG)はほぼ正常で,慢性期CAG・左室造影(LVG)検査時に実施したアセチルコリン(ACh)冠動脈内注入にて前下行枝近位部に高度冠動脈攣縮が誘発され,梗塞責任冠動脈が顕性化した症例を経験したので報告する. 症例は52歳,女性.急性心筋梗塞にて当院集中治療室に入室.入室時心電図所見でII,III,aVF,V2-V6でST上昇を認め,胸痛出現5時間後に緊急CAG・LVGを実施した.冠動脈には有意狭窄および血栓の所見は認めずほぼ正常であった.しかしLVGでは心尖部にdyskinesisが認められた.第40病日に実施したCAGは急性期のそれと類似したが,AChを左右冠動脈に注入したところ両冠動脈共に冠攣縮が誘発された.特に左冠動脈前下行枝近位部は90%以上の高度攣縮を呈し,ACh注入5分後に他の部位はほぼ正常に戻ったのに対し冠攣縮が残存しニトログリセリン冠動脈注入によりコントロールに復した.経時的心電図変化,LVG,TI心筋スキャン等より前壁中隔梗塞と診断されたが,AChにより高度冠攣縮を呈した部位が梗塞責任部位と判定された. 以上ACh冠動脈内注入により梗塞責任部位が顕性化された冠攣縮が原因と思われる正常冠動脈の急性心筋梗塞の!例を報告する. |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo1969.23.7_763 |