人工心肺回路内圧上昇における白血球の関与

人工心肺使用時の異常な回路内圧上昇は国内外問わず報告されており,人工肺交換を要する可能性のある危険な現象である。その原因として血栓形成などが推測されているが,血栓の存在を証明できた報告は少なく,回路内圧上昇の原因やメカニズムは解明されていなかった。そこで,我々は模擬体外循環回路とブタの血液を使用して,回路内圧上昇の原因を探った。その結果,模擬回路の狭小部位に白血球由来細胞外 DNA が付着しており,この細胞外 DNA が模擬回路の回路内圧を上昇させていると結論づけた。白血球の中でも老化白血球や活性化白血球が狭小部位を通過する際にその細胞膜を損傷し,DNA が細胞外に放出されるのだと考えられた。...

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Published inCardiovascular Anesthesia Vol. 29; no. 1; pp. 37 - 44
Main Authors 十時 崇彰, 八島 望, 伊藤 隆史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会 01.09.2025
日本心臓血管麻酔学会
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ISSN1342-9132
1884-7439
DOI10.11478/jscva.2024-1-008

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Summary:人工心肺使用時の異常な回路内圧上昇は国内外問わず報告されており,人工肺交換を要する可能性のある危険な現象である。その原因として血栓形成などが推測されているが,血栓の存在を証明できた報告は少なく,回路内圧上昇の原因やメカニズムは解明されていなかった。そこで,我々は模擬体外循環回路とブタの血液を使用して,回路内圧上昇の原因を探った。その結果,模擬回路の狭小部位に白血球由来細胞外 DNA が付着しており,この細胞外 DNA が模擬回路の回路内圧を上昇させていると結論づけた。白血球の中でも老化白血球や活性化白血球が狭小部位を通過する際にその細胞膜を損傷し,DNA が細胞外に放出されるのだと考えられた。さらに,ヘパリンが回路内圧上昇に関与している可能性が示唆された。ヘパリンは心臓手術において一般的に使用される抗凝固薬であるが,過去の報告で白血球にも影響を与えることが示されている。細胞外 DNA は模擬回路における回路内圧上昇の原因だけでなく,ダメージ関連分子パターン(Damage-associated molecular patterns、DAMPs)の一つであるため,人工心肺使用時に凝固線溶系の活性化や炎症反応を引き起こす原因となっているかもしれない。
ISSN:1342-9132
1884-7439
DOI:10.11478/jscva.2024-1-008