高齢者における橋本病の特徴
橋本病患者の臨床所見の年齢に伴う変化を分析する目的で, 橋本病患者を年齢および甲状腺機能別に分類し解析を行った. 高齢の橋本病患者の特徴として小さな甲状腺腫が多く, また持続性甲状腺機能低下症が多くバセドウ病が少なかった. 甲状腺がTSHまたはTSH受容体抗体で刺激されているほど未治療時の血中トリヨードチロニン (T3)/チロキシン (T4) 比 (ng/μg) が高かったが, 年齢による差はなかった. 実際の臨床において血中T3/T4比は破壊性甲状腺中毒症とバセドウ病の鑑別に有用である. 持続性甲状腺機能低下症のT4補充療法で投与T4量に対する血中T4濃度上昇の程度が高齢者ほど大きかった....
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 35; no. 10; pp. 771 - 776 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.10.1998
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.35.771 |
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Summary: | 橋本病患者の臨床所見の年齢に伴う変化を分析する目的で, 橋本病患者を年齢および甲状腺機能別に分類し解析を行った. 高齢の橋本病患者の特徴として小さな甲状腺腫が多く, また持続性甲状腺機能低下症が多くバセドウ病が少なかった. 甲状腺がTSHまたはTSH受容体抗体で刺激されているほど未治療時の血中トリヨードチロニン (T3)/チロキシン (T4) 比 (ng/μg) が高かったが, 年齢による差はなかった. 実際の臨床において血中T3/T4比は破壊性甲状腺中毒症とバセドウ病の鑑別に有用である. 持続性甲状腺機能低下症のT4補充療法で投与T4量に対する血中T4濃度上昇の程度が高齢者ほど大きかった. しかし投与T4量に対する血中T3濃度上昇および血中TSH濃度低下の程度は年齢による差はなかった. 従って血中T3濃度上昇に対する血中TSH濃度の低下は年齢により影響されないが, 血中T4濃度上昇に対する血中TSH濃度低下の程度は高齢者では低下していた. 高齢者ではT4の代謝および脱ヨード酵素活性 (DI) (脳下垂体の type 2DIと他臓器の type 1 DI) の低下が考えられた. 高齢者の橋本病患者において血中TSHを指標とする限り投与T4量は若年者と変わらなかった. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.35.771 |