心臓血管手術におけるフィブリノゲン補充療法:フィブリノゲン濃縮製剤の歴史と臨床活用
トロンビン産生阻害,消費性凝固障害,希釈性凝固障害など様々な要因が人工心肺離脱後の止血に影響を与える1-3)。特に血漿中のフィブリノゲン濃度の低下は凝固障害の主因とされており,厚生労働省の血液製剤使用指針では,新鮮凍結血漿(Fresh Frozen Plasma、FFP)によるフィブリノゲン補充療法の適応として,血漿フィブリノゲン濃度 150 mg/dL 以下,またはそれ以下に進展する危険性がある場合と示されている4)。そのため,心臓血管手術における止血の観点からは,種々の凝固因子のうち特にフィブリノゲン濃度を適切に維持することが重要であると考えられている。 2021 年 9 月,産科危機的出...
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Published in | Cardiovascular Anesthesia Vol. 29; no. 1; pp. 61 - 68 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本心臓血管麻酔学会
01.09.2025
日本心臓血管麻酔学会 |
Subjects | |
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ISSN | 1342-9132 1884-7439 |
DOI | 10.11478/jscva.2025-1-008 |
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Summary: | トロンビン産生阻害,消費性凝固障害,希釈性凝固障害など様々な要因が人工心肺離脱後の止血に影響を与える1-3)。特に血漿中のフィブリノゲン濃度の低下は凝固障害の主因とされており,厚生労働省の血液製剤使用指針では,新鮮凍結血漿(Fresh Frozen Plasma、FFP)によるフィブリノゲン補充療法の適応として,血漿フィブリノゲン濃度 150 mg/dL 以下,またはそれ以下に進展する危険性がある場合と示されている4)。そのため,心臓血管手術における止血の観点からは,種々の凝固因子のうち特にフィブリノゲン濃度を適切に維持することが重要であると考えられている。 2021 年 9 月,産科危機的出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症に対するフィブリノゲン濃縮製剤(Fibrinogen Concentrate、Fib-c)使用に対する保険適用が拡大された。「産科危機的出血への対応指針 2022」では,原則としてフィブリノゲン値 150 mg/dL 未満であることを確認するまでは,FFP またはクリオプレシピテート(Cryoprecipitate、Cryo)による凝固因子補充が推奨されている5)。近年,心臓血管手術における後天性低フィブリノゲン血症に対しても Fib-c の保険適用拡大が期待されており,Fib-c について改めて理解を深めることが求められる時期にあるといえる。 |
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ISSN: | 1342-9132 1884-7439 |
DOI: | 10.11478/jscva.2025-1-008 |