症例 解離性大動脈瘤心嚢内破裂時の心電図経過を捉えた1例

急性上行大動脈解離の心嚢内破裂による急死は時に遭遇するが,その破裂急死時の心電図を捉えることはめずらしい.本症例は手術直前に急死した1例の心電図経過を捉えたものである.症例は38歳,生来健康の自覚にて受診歴のない男性.突然の背部痛が出現し,緊急入院となる.患者は長身で心基部から心尖部にかけてto and fro murmur3/6度を聴取,血圧に左右差はなく両側大腿動脈も触知した.心電図は洞頻脈,ST・T変化あり.胸部X線写真では大動脈の拡大を認めた.WBC14,100/mm3,CK20IU/dl,CRP0.2mg/dl.尿所見は異常.超音波検査ならびに造影X線CTにて,大動脈弁逆流を合併した...

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Published in心臓 Vol. 27; no. 1; pp. 81 - 85
Main Authors 羽田, 勝征, 岡田, 了三, 青柳, 昭彦, 田宮, 栄治, 丹野, 正隆, 杉下, 和郎, 河野, 浩章, 伊藤, 敦彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1995
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo1969.27.1_81

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Summary:急性上行大動脈解離の心嚢内破裂による急死は時に遭遇するが,その破裂急死時の心電図を捉えることはめずらしい.本症例は手術直前に急死した1例の心電図経過を捉えたものである.症例は38歳,生来健康の自覚にて受診歴のない男性.突然の背部痛が出現し,緊急入院となる.患者は長身で心基部から心尖部にかけてto and fro murmur3/6度を聴取,血圧に左右差はなく両側大腿動脈も触知した.心電図は洞頻脈,ST・T変化あり.胸部X線写真では大動脈の拡大を認めた.WBC14,100/mm3,CK20IU/dl,CRP0.2mg/dl.尿所見は異常.超音波検査ならびに造影X線CTにて,大動脈弁逆流を合併した解離性大動脈瘤DeBakey I型と診断した.その翌日手術と決定するも,手術室入室2時間前の早朝5時50分に急変.モニターでは洞調律から接合部調律を経て1,2分後には完全房室ブロックとなり,その後すぐに心停止へ移行した.蘇生を試みるも効果なかった.病理解剖では心タンポナーデと,腎動脈レベルまでの解離があり,また,房室結節付近に血腫を認めた.急死時の心電図経過を捉えることができたので,文献的考察を含め報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.27.1_81