中高年者に適用可能な死に対する態度尺度(ATDS-A)の構成および信頼性・妥当性の検討

目的:本研究は,青年版「死に対する態度尺度」の中高年者への適用可能性を検討し,有効な尺度を構成することを目的とした.方法:40~79歳の中高年者2,223名が,事前の検討により原版から抜粋した項目に回答した.約半数の対象者のデータで探索的因子分析を行った.その結果に基づくモデル,および原版の因子構造モデルを用いて,残りの半数の対象者データで確認的因子分析を行い,適合度を検討し,尺度構成を決定した.対象者全体について,信頼性の検討のためにα係数を算出し,構成概念妥当性の検討のために「エリクソン心理社会的段階目録検査」から抜粋した自我統合性得点の三分位による群間で分散分析を行った.結果:探索的因子...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 50; no. 1; pp. 88 - 95
Main Authors 丹下, 智香子, 下方, 浩史, 西田, 裕紀子, 富田, 真紀子, 安藤, 富士子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 2013
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.50.88

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Summary:目的:本研究は,青年版「死に対する態度尺度」の中高年者への適用可能性を検討し,有効な尺度を構成することを目的とした.方法:40~79歳の中高年者2,223名が,事前の検討により原版から抜粋した項目に回答した.約半数の対象者のデータで探索的因子分析を行った.その結果に基づくモデル,および原版の因子構造モデルを用いて,残りの半数の対象者データで確認的因子分析を行い,適合度を検討し,尺度構成を決定した.対象者全体について,信頼性の検討のためにα係数を算出し,構成概念妥当性の検討のために「エリクソン心理社会的段階目録検査」から抜粋した自我統合性得点の三分位による群間で分散分析を行った.結果:探索的因子分析により,5因子を抽出した.このモデルに基づく確認的因子分析で得られた適合度はRMSEA=0.057,GFI=0.915,AIC=1,315.775で,原版モデルよりも良いあてはまりを示した.この構造に基づき下位尺度化を行い,「死に対する恐怖」,「死後の生活の存在への信念(民俗宗教的な死後存在の信念)」,「生を全うさせる意志(自殺の否定,最後まで生きる意志)」,「人生に対して死が持つ意味(生との関連で死を意味づけ)」,「身体と精神の死(QOLから死を位置づけ)」の5側面の測定が可能な,中高年版死に対する態度尺度を構成した.信頼性係数は項目数が少ない「身体と精神の死」でα=.59とやや低かったが,他の下位尺度では.67~.87と十分な値を得た.統合性得点群間での分散分析の結果,「死に対する恐怖」など4下位尺度で理論的に想定された方向での統合性の有意な効果が示され,構成概念妥当性が支持された.結論:本研究により,中高年者に適用可能な,妥当性・信頼性を兼ね備えた「死に対する態度尺度」が構成された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.50.88