症例 僧帽弁口および肺静脈血流速波形の興味ある変化を示した腎血管性高血圧症の1例

今回我々は,経胸壁および経食道ドプラ心エコー法を用い,後負荷の増大を伴う腎血管性高血圧症の1例における僧帽弁口血流速波形と肺静脈血流速波形を記録し,その経時的変化について興味ある知見を得た.症例は43歳,女性.入院時現症では著明な高血圧および血圧の左右差を示し,ESRの充進と血清レニン活性の上昇,腎動脈造影およびシンチグラムでは右腎動脈起始部の狭窄と右腎の描出不良所見がみられ,カラードプラ法にて軽度の大動脈弁逆流所見を得た.右心カテーテル検査では肺動脈楔入圧の著明な上昇を認めたものの,Mモード心エコー図による左室径は正常範囲内であり,左室内径短縮率にも異常を認めず,肺動脈楔入圧増大の要因として...

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Published in心臓 Vol. 25; no. 1; pp. 91 - 96
Main Authors 福田, 和代, 大木, 崇, 井内, 新, 小川, 聡, 林, 真見子, 影治, 好美, 清重, 浩一, 藤本, 卓, 細井, 憲三, 田畑, 智継, 真鍋, 和代, 福田, 信夫, 伊東, 進
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 1993
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Summary:今回我々は,経胸壁および経食道ドプラ心エコー法を用い,後負荷の増大を伴う腎血管性高血圧症の1例における僧帽弁口血流速波形と肺静脈血流速波形を記録し,その経時的変化について興味ある知見を得た.症例は43歳,女性.入院時現症では著明な高血圧および血圧の左右差を示し,ESRの充進と血清レニン活性の上昇,腎動脈造影およびシンチグラムでは右腎動脈起始部の狭窄と右腎の描出不良所見がみられ,カラードプラ法にて軽度の大動脈弁逆流所見を得た.右心カテーテル検査では肺動脈楔入圧の著明な上昇を認めたものの,Mモード心エコー図による左室径は正常範囲内であり,左室内径短縮率にも異常を認めず,肺動脈楔入圧増大の要因としては腎血管性高血圧に伴う後負荷増大の影響が考えられた.入院時における僧帽弁口および肺静脈血流速波形は,前者が“一見正常パターン”を示し,後者が拡張期陽性波および心房収縮期陰性波の増高を特徴とした.このような波形を示した原因としては,後負荷増大により左室拡張末期圧,さらには肺動脈楔入圧の上昇を招来したことが重要と考えられ,僧帽弁口および肺静脈血流速波形の経時的観察は,本病態における血行動態異常を把握する一助となりうることが示唆された.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo1969.25.1_91