ヘアリーベッチ-トマト輪作体系における前年施用ヘアリーベッチ由来窒素のトマトへの寄与率

持続可能な農業体系の確立において,カバークロップの利用は特に栽培当年における養分供給能という点で有効であるが,カバークロップ由来の養分は土壌中に残存しており,翌年以降も影響を与える.本試験ではマメ科植物ヘアリーベッチ(Vicia villosa R,以下 HV)をカバークロップとして導入した生食用トマト(Solanum lycopersicum L.)‘ハウス桃太郎’の施設栽培において,安定同位体 15N を用いて HV-トマト輪作体系における前年施用 HV 由来窒素の翌年のトマトへの寄与率を測定することによって,長期的な HV の効果を調査した.2011 年に 15N でラベルした HV(1...

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Published inThe Horticulture Journal Vol. 85; no. 3; pp. 217 - 223
Main Authors 杉原, 雄一, 上野, 秀人, 平田, 聡之, 小松崎, 将一, 荒木, 肇
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 一般社団法人 園芸学会 2016
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Summary:持続可能な農業体系の確立において,カバークロップの利用は特に栽培当年における養分供給能という点で有効であるが,カバークロップ由来の養分は土壌中に残存しており,翌年以降も影響を与える.本試験ではマメ科植物ヘアリーベッチ(Vicia villosa R,以下 HV)をカバークロップとして導入した生食用トマト(Solanum lycopersicum L.)‘ハウス桃太郎’の施設栽培において,安定同位体 15N を用いて HV-トマト輪作体系における前年施用 HV 由来窒素の翌年のトマトへの寄与率を測定することによって,長期的な HV の効果を調査した.2011 年に 15N でラベルした HV(1319 mg N/pot)を施用し,窒素施肥量を 0,80,240 kg·ha−1(以下 N0HV,N80HV,N240HV)の 3 水準設けて,1/2000 a のワグネルポットを用いて,トマト栽培した.栽培終了後,ポットに土壌を入れたままビニールハウス内で保管し,その土壌を使用して 2012 年にトマト栽培を行った.その際,2011 年と同じ施肥量の窒素肥料(0,80,240 kg·ha−1)と 15N でラベルしていない HV(935 mg N/pot)を施用し,2011 年に施用した HV 由来窒素のトマトへの寄与率を調査した.その結果,総窒素吸収量は施肥量に比例して多かったが,2011 年に施用した HV 由来窒素の吸収量は処理間で差はなく,平均 57.7 mg/plant であった.したがって 2011 年施用 HV 由来窒素利用効率は平均 4.4%と,施用当年の利用効率(平均 47.1%,Sugihara et al., 2013)よりもはるかに低かったため,前年施用 HV がトマトの生育に大きく影響するとは言えない.しかし栽培終了時の土壌に残存する HV 由来窒素は 2011 年の栽培終了時よりも減少していたが,まだ土壌中に残存していた.したがって,HV-トマト輪作体系において,HV 由来窒素はわずかではあるが土壌に蓄積していき,長期的に少しずつ利用されていくことが示唆された.また生育初期に発達する第 1,2 果房に多く分配される傾向があったことから,生育初期に影響することが示唆された.したがって HV は輪作体系において,持続的な窒素供給源として,特に生育初期の窒素源としての役割を果たしていると考えられる.
ISSN:2189-0102
2189-0110
DOI:10.2503/hortj.MI-073