循環器疫学調査における血漿レニン活性と脳心事故との関連について

一農村地区の40歳以上の成人を対象とした循環器疫学調査を行ない, 随時採血法による血漿レニン活性 (Plasma renin activity 以下PRAと略す) を経年的に測定し, 脳心事故発生とPRAの関連について検討した. 48年度正常血圧者325名, 高血圧者161名, 49年各々86名, 108名, 50年は206名, 110名について, 受診時坐位血圧測定後, 随時採血し, Radioimmunoassay 法によりPRAを測定した. 正常値は, 正常血圧群のPRA平均値±標準偏差により算出し, 正常範囲より高い値をとるものを高レニン群, 低いものを低レニン群と分類した. 高血圧群...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 15; no. 3; pp. 215 - 227
Main Author 後藤, 京子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.05.1978
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.15.215

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Summary:一農村地区の40歳以上の成人を対象とした循環器疫学調査を行ない, 随時採血法による血漿レニン活性 (Plasma renin activity 以下PRAと略す) を経年的に測定し, 脳心事故発生とPRAの関連について検討した. 48年度正常血圧者325名, 高血圧者161名, 49年各々86名, 108名, 50年は206名, 110名について, 受診時坐位血圧測定後, 随時採血し, Radioimmunoassay 法によりPRAを測定した. 正常値は, 正常血圧群のPRA平均値±標準偏差により算出し, 正常範囲より高い値をとるものを高レニン群, 低いものを低レニン群と分類した. 高血圧群では, 正常レニン群64%高レニン群13%低レニン群23%で, 低レニン者の占める率が, 正常血圧群の12%に比して有意に多かった. PRAと収縮期圧とは, 3年間の測定を通して, 正常血圧群および高血圧群をも含めた全対象で, 常に有意の逆相関を示した. 拡張期圧とは, 48年の全対象, 50年の正常血圧群と全対象, 年齢とは, 49年の正常血圧群と全対象で有意の逆相関がみられた. 心胸廓比, 血清尿素窒素, コレステロール, 眼底変化等とレニンレベルとは, 相関はみられなかったが, 心電図でST-T変化の強いものが, 高血圧, 高レニン群で多くみられた. 観察期間中, PRA測定後に脳心事故のあった, 13例につき, 性, 年齢および血圧を同条件にした対照群とχ2-検定を行った結果, 高血圧高レニン群ついで高血圧低レニン群に発症が多く, 正常レニン群では少ないという結果を得た. 重判別分析によれば, 脳心事故発症・非発症の判別には, 収縮期血圧についで, 高レニンが判別に関与していた. 従来の危険要因にPRAを加えることにより脳心事故発症の予測率が向上することが認められた. 疫学的調査において, 血圧測定に加えてPRAを測定することが, 有意義であることを認めた.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.15.215