老年者における大腿骨頚部骨折後における肺合併症の検討
大腿骨頚部骨折は老年者に発生頻度が高い. かかる老年者にみる骨折に合併する呼吸器疾患のうちでは肺血栓・塞栓症, あるいは肺炎が重要であるが, 臨床上, 両者の鑑別は困難であることが多い. 本研究は, 老年者の大腿骨頚部骨折後に生ずる肺血栓・塞栓症のうちで重篤な経過をとる大量栓子の病像解明を目的とした. 最近5年間に東京都老人医療センターに大腿骨頚部骨折の治療目的に入院した618例を遡及的に調査した. 対象とした全例が65歳以上の老年者である. 骨折後入院までの日数は, 平均2.3日であった. 入院直後の諸検査により, 肺合併症がみられた例については, 詳細に経過を追跡調査した. 肺合併症は次の...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 26; no. 2; pp. 174 - 178 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
01.03.1989
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.26.174 |
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Summary: | 大腿骨頚部骨折は老年者に発生頻度が高い. かかる老年者にみる骨折に合併する呼吸器疾患のうちでは肺血栓・塞栓症, あるいは肺炎が重要であるが, 臨床上, 両者の鑑別は困難であることが多い. 本研究は, 老年者の大腿骨頚部骨折後に生ずる肺血栓・塞栓症のうちで重篤な経過をとる大量栓子の病像解明を目的とした. 最近5年間に東京都老人医療センターに大腿骨頚部骨折の治療目的に入院した618例を遡及的に調査した. 対象とした全例が65歳以上の老年者である. 骨折後入院までの日数は, 平均2.3日であった. 入院直後の諸検査により, 肺合併症がみられた例については, 詳細に経過を追跡調査した. 肺合併症は次の3群に分類された. I群: 骨折以前より基礎疾患として呼吸器疾患が存在 (29例). II群: 骨折後, 新たな呼吸器系に関する自他覚症状が出現, 検査結果より肺血栓・塞栓症が強く疑われた (12例). III群: 臨床経過より肺血栓・塞栓症と肺炎との鑑別が困難 (4例). II, III群を構成する症例を検討した結果, 自覚症状では, 呼吸困難, 咳嗽・喀痰が多く, 他覚症状では, 約半数例に頻脈, 頻呼吸がみられた. 検査所見では, II群で白血球の増加を伴う低酸素血症が特徴的であり, 入院直後の胸部レ線で, 浸潤影を呈するものが56.4%みられた. かかるII群の症例でも発症後72時間以内には呼吸不全を脱し, 7日後には全例PaO2 60Torr以上に達した. 老年者の大腿骨頚部骨折後に生じる肺血栓・塞栓症につき臨床病理学的な考察を加えた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.26.174 |