運動負荷心エコー法による健常高齢者の心収縮能に関する研究 心断層エコー法を用いて

高齢者において運動耐容能低下が指摘され, 加齢とともに心収縮能が低下することが想定されている. しかし, 高齢者では観血的検査が容易でなく, 心収縮能低下が単なる加齢の影響であるのか, あるいは潜在性心病変, ことに冠動脈硬化性心疾患の結果であるのかを鑑別することは重要な問題と考えられる. したがって, 心機能について加齢の影響を検討する場合には健常高齢者の基準を明確にする必要がある. 本研究では一定条件で選択した健常若年者10名および高齢者9名を対象とし, 仰臥位自転車エルゴメーター負荷を課し, 75ワット負荷時の恒常状態で心断層エコー図および頸動脈波の同時記録をおこない, 乳頭筋レベルの短...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 19; no. 5; pp. 481 - 486
Main Authors 桜田, 春水, 橋本, 裕二, 保坂, 俊明, 柳瀬, 治, 玉置, 肇, 前沢, 秀憲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.09.1982
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.19.481

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Summary:高齢者において運動耐容能低下が指摘され, 加齢とともに心収縮能が低下することが想定されている. しかし, 高齢者では観血的検査が容易でなく, 心収縮能低下が単なる加齢の影響であるのか, あるいは潜在性心病変, ことに冠動脈硬化性心疾患の結果であるのかを鑑別することは重要な問題と考えられる. したがって, 心機能について加齢の影響を検討する場合には健常高齢者の基準を明確にする必要がある. 本研究では一定条件で選択した健常若年者10名および高齢者9名を対象とし, 仰臥位自転車エルゴメーター負荷を課し, 75ワット負荷時の恒常状態で心断層エコー図および頸動脈波の同時記録をおこない, 乳頭筋レベルの短軸断面積変化率および平均短軸断面積変化速度を算出し, 安静時の値と比較した. 心拍数および全末梢血管抵抗は負荷前値および負荷に対する反応に若年群と差を認めなかった. 収縮期および拡張期血圧は負荷前両群間に差を認めなかったが, 負荷により高齢群で上昇が大であった (p<0.05). また, 左室駆出時間は若年群で有意に短縮したが, 高齢群では差は得られなかった. 一方, 負荷前値における拡張末期および収縮末期短軸断面積は両群間に差を認めず, 負荷時の値においても両群とも有意の変化を認めなかった. 心断層エコー上心収縮能を反映し有用な指標と考えられる短軸断面積変化率および平均短軸断面積変化速度は負荷前両群間で差は認められなかったが, 後者は若年群で負荷中有意に増加した (p<0.05). しかし, 負荷に対する反応には両者とも両群間で差を認めなかった. 以上より, 一定の条件で選択された健常高齢者では心収縮能の低下はないことが示唆された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.19.481