高齢者の貧血

健康高齢者の末梢血液検査値を調査し, 高齢者貧血の頻度および, 入院中の高齢者貧血の基礎疾患と貧血の種類について検討し以下の成績を得た. 1) 高齢者では, 赤血球数, 血色素量, 血小板数が減少する. また MCHC は低くなるが MCV は高くなる. 高齢者貧血は, 血色素量11.2g/dl, 赤血球数350万/mm3以下と規定するのが適当と考えられた. 老人ホーム在住者の貧血の頻度は男11%, 女13%であった. 一方, 入院中の高齢者では男33%, 女53%であった. 2) 入院高齢者では, 血液疾患, 肝疾患, 消化管出血, 悪性腫瘍, 感染症で貧血の頻度が高いが, 脳血管障害, 循...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 16; no. 4; pp. 346 - 352
Main Authors 松原, 充隆, 中野, 小枝子, 小出, 幸夫, 佐藤, 磐男, 前田, 甲子郎, 仁田, 正和, 新美, 達司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 01.07.1979
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.16.346

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Summary:健康高齢者の末梢血液検査値を調査し, 高齢者貧血の頻度および, 入院中の高齢者貧血の基礎疾患と貧血の種類について検討し以下の成績を得た. 1) 高齢者では, 赤血球数, 血色素量, 血小板数が減少する. また MCHC は低くなるが MCV は高くなる. 高齢者貧血は, 血色素量11.2g/dl, 赤血球数350万/mm3以下と規定するのが適当と考えられた. 老人ホーム在住者の貧血の頻度は男11%, 女13%であった. 一方, 入院中の高齢者では男33%, 女53%であった. 2) 入院高齢者では, 血液疾患, 肝疾患, 消化管出血, 悪性腫瘍, 感染症で貧血の頻度が高いが, 脳血管障害, 循環器疾患, 骨折など寝たきり状態となる疾患でも貧血が認められた. 3) 貧血患者101名を鉄欠乏性, 葉酸欠乏性, ビタミンB12欠乏性貧血とその他の貧血に分類した. 鉄欠乏性貧血は36例みられた. 鉄飽和度16%以下の症例12例にのみ鉄剤投与を行ない, 残りの24例は基礎疾患の治療を行なった. 16例に治療効果がみられ, 20例に貧血の改善がみられた. 葉酸欠乏性貧血は17例みられ, 11例が鉄欠乏を伴なっていた. 葉酸の投与を行ない5例に治療効果がみられ, 3例に貧血の改善がみられた. 骨髄巨赤芽球の出現の少ない症例で過分葉好中球を認める症例もみられた. ビタミンB12欠乏性貧血は1例もみられず, 入院中, ビタミン剤の投与によると考えられた. その他の貧血は48例みられた. ビタミン B12, 葉酸値の subnormal の症例がみられまた過分葉好中球の出現する症例, 大赤血球性傾向もみられたので, 経過中, ビタミンB12欠乏性あるいは葉酸欠乏性貧血に移行する症例のあることが示唆された. 以上の諸成績より高齢者では, 各種疾患で貧血が生じやすく, 貧血が一般状態を悪化させることがあるので基礎疾患を見出し適切な治療が必要である. また, 寝たきり状態で食事摂取の不十分な高齢者では, ビタミンB12, 葉酸の補給が必要である.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.16.346