頭痛患者におけるクモ膜下出血の見逃し回避を目指した予測スコア(subarachnoid hemorrhage prediction score)の開発

背景:クモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage; SAH) の予後は早期診断に依存し,診断の遅れはmorbidityやmortalityを悪化させる。しかしながら,初診の段階で12%のSAHが見逃されているとの報告もあり,発症初期における高精度の予測が必要とされている。目的:頭痛を主訴に救急搬送された症例でSAHを疑わせる客観的予測因子を同定し, これらを組み合わせてSAHの有無を予測するスコアを策定すること。対象と方法:2001年より9年間で頭痛を主訴に救急搬送された症例のうち,外傷,酩酊,昏睡の症例や,最終転帰不明の症例を除いた573例を対象とした。このうち2001年1...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 22; no. 7; pp. 305 - 311
Main Authors 木村, 昭夫, 萩原, 章嘉, 新保, 卓郎, 佐々木, 亮, 伊中, 愛貴, 小林, 憲太郎, 佐藤, 琢紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2011
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.22.305

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Summary:背景:クモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage; SAH) の予後は早期診断に依存し,診断の遅れはmorbidityやmortalityを悪化させる。しかしながら,初診の段階で12%のSAHが見逃されているとの報告もあり,発症初期における高精度の予測が必要とされている。目的:頭痛を主訴に救急搬送された症例でSAHを疑わせる客観的予測因子を同定し, これらを組み合わせてSAHの有無を予測するスコアを策定すること。対象と方法:2001年より9年間で頭痛を主訴に救急搬送された症例のうち,外傷,酩酊,昏睡の症例や,最終転帰不明の症例を除いた573例を対象とした。このうち2001年1月1日~2006年12月31日の356例について頭部CT,腰椎穿刺でSAHと診断されたSAH群(n=88)と認めなかった対照群(n=268)に分け,バイタルサインや検査値など数値で表される項目を調査し,単変量並びに多変量ロジスティック解析を施行して予測因子を決定し,それらを基にSAH予測スコア(SPS)を作成した。次に2007年1月1日~2009年12月31日の217例を用いて,作成された予測スコアを検証した。結果:臨床の場面での使い易さを踏まえ,白血球数>8,000(/μl),血糖値>130(mg/dl),血清K値<3.5(mEq/l),収縮期血圧>140(mmHg)という因子とカットオフ値が導き出された。これらの予測因子に点数を定め,SPSとして各群に点数付けを行った。SPS=0点の患者において,SAHは存在しなかった。更にSPSが上昇するに従いSAHのリスクも高まった。また,検証群においてもSPSについて同様の結果を得た。結語:SPSを用いることにより,救急外来において,見逃し回避を重視したSAH予測が可能となる。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.22.305