副咽頭(頭蓋底)転移に対する手術の適応と限界

甲状腺癌の副咽頭間隙への転移は稀であるが,副咽頭への転移は頸部転移に比べると切除不能となりやすい。最大の要因は解剖学的な位置にある。副咽頭は頭蓋底に隣接する狭い間隙で,腫瘍による臓器浸潤(特に内頸動・静脈や複数臓器への浸潤)を有する場合,治癒切除できない可能性が高い。また副咽頭腫瘍は臨床症状を呈しにくいこと,下顎骨が障壁となり術野を確保しにくいこと,内分泌外科医にとってなじみの薄い部位であることも切除不能となりやすい(されやすい)要因である。副咽頭転移の手術の決定には,切除の可否の他に,切除による機能障害も考慮すべき点である。副咽頭には,内頸動・静脈の周囲に嚥下に関わる下部脳神経が密集する。こ...

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Published in日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 Vol. 35; no. 1; pp. 42 - 46
Main Author 森谷, 季吉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会 2018
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ISSN2186-9545
DOI10.11226/jaesjsts.35.1_42

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Summary:甲状腺癌の副咽頭間隙への転移は稀であるが,副咽頭への転移は頸部転移に比べると切除不能となりやすい。最大の要因は解剖学的な位置にある。副咽頭は頭蓋底に隣接する狭い間隙で,腫瘍による臓器浸潤(特に内頸動・静脈や複数臓器への浸潤)を有する場合,治癒切除できない可能性が高い。また副咽頭腫瘍は臨床症状を呈しにくいこと,下顎骨が障壁となり術野を確保しにくいこと,内分泌外科医にとってなじみの薄い部位であることも切除不能となりやすい(されやすい)要因である。副咽頭転移の手術の決定には,切除の可否の他に,切除による機能障害も考慮すべき点である。副咽頭には,内頸動・静脈の周囲に嚥下に関わる下部脳神経が密集する。このため高齢者など嚥下機能の低下したものでは,術後の嚥下障害が致命的な合併症となる場合がある。甲状腺分化癌の副咽頭転移に対する手術は,切除の可否の他に,術後の機能障害の予測を含め決定すべきである。
ISSN:2186-9545
DOI:10.11226/jaesjsts.35.1_42