千葉県清和県民の森周辺の地質 ーとくに安房層群清澄層・安野層の層序と構造について

千葉県の房総半島中央部の小糸川上流域に位置する清和県民の森周辺には,新第三系の安房層群天津層,清澄層および安野層が分布する.天津層は半遠洋性泥岩の卓越するベースンフロア堆積物,清澄層および安野層は砂岩優勢から泥岩優勢へと変化するタービダイトサクセッションである.この地域には,古くからの三島ダム湖,豊英ダム湖の存在により,他の地域のような凝灰岩鍵層の分布に基づいた詳細な地質図の作成やそれに基づいた層序や構造等の検討は今まで行われていない.本研究では,モーターボートを用いたダム湖の調査及び周辺丘陵山間部の調査により,本地域の詳細な地質図を作成するとともに,そこに分布する清澄層および安野層の層序・層...

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Published in地質調査研究報告 Vol. 52; no. 9; pp. 383 - 404
Main Authors 徳橋, 秀一, 石原, 与四郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 2001
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ISSN1346-4272
2186-490X
DOI10.9795/bullgsj.52.383

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Summary:千葉県の房総半島中央部の小糸川上流域に位置する清和県民の森周辺には,新第三系の安房層群天津層,清澄層および安野層が分布する.天津層は半遠洋性泥岩の卓越するベースンフロア堆積物,清澄層および安野層は砂岩優勢から泥岩優勢へと変化するタービダイトサクセッションである.この地域には,古くからの三島ダム湖,豊英ダム湖の存在により,他の地域のような凝灰岩鍵層の分布に基づいた詳細な地質図の作成やそれに基づいた層序や構造等の検討は今まで行われていない.本研究では,モーターボートを用いたダム湖の調査及び周辺丘陵山間部の調査により,本地域の詳細な地質図を作成するとともに,そこに分布する清澄層および安野層の層序・層相を明らかにした. その結果,地質構造は,詳細な地質が明らかになっている東側の半島中央部と同様,一組の向斜・背斜軸に沿って地層が分布すること,全体的に上位の上総層群も切る南北系の断層が卓越するが,清澄層が厚く分布する向斜南翼の一部では東西方向の逆断層が存在することが明らかになった. 属相については,清澄層は下位の天津属境界から整然とした砂岩泥岩互層の堆積からなるが,その上位の安野層には今まで報告にない大規模なチャネル構造や礫層を伴うチャネル充填堆積物が認められた.チャネルによる下位層準の削剥は天津層Am78層準まで及ぶと推定される.また,全体的には清澄層から安野層にかけて,上位に向かつて北側に堆積の中心を移すこと,どの層準でも背斜軸とその周辺では,泥岩が粗粒化していることなどが明らかになった. 房総半島の中・東部域では,整然とした泥岩優勢のタービダイトサクセッションである安野層が,本地域では,幅1km,長さ数kmのチャネル構造をもつことが明らかになり,安野層の堆積様式を考える上で,本地域が極めて重要な地域であることが判明した.
ISSN:1346-4272
2186-490X
DOI:10.9795/bullgsj.52.383