最大エントロピーモデルを用いた福井県若狭町におけるナゴヤダルマガエルの分布に影響する景観要素の解析と保全対象地の選定

福井県若狭町はす川流域に生息するナゴヤダルマガエルPelophylax porosus brevipodusの保全策を検討するために、景観スケールにおけるナゴヤダルマガエルの生息地選好性を調査した。また、近縁種であるトノサマガエルPelophylax nigromaculatusとの繫殖干渉が起こりにくい地域を特定するために、トノサマガエルの生息適地も同時に調査した。2022年6月–7月と2023年6月–7月の2か年にわたり、両種の分布調査を実施した。そして、最大エントロピーモデルを使用して、はす川流域における両種の繁殖期の生息適地を推定した。分布調査の結果、ナゴヤダルマガエルは主に下流域に分...

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Published in保全生態学研究 Vol. 30; no. 1; pp. 55 - 67
Main Authors 小倉 彰紀, 杉本 亮, 石井 潤, 松林 順, 片岡 剛文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生態学会 31.05.2025
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ISSN1342-4327
2424-1431
DOI10.18960/hozen.2405

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Summary:福井県若狭町はす川流域に生息するナゴヤダルマガエルPelophylax porosus brevipodusの保全策を検討するために、景観スケールにおけるナゴヤダルマガエルの生息地選好性を調査した。また、近縁種であるトノサマガエルPelophylax nigromaculatusとの繫殖干渉が起こりにくい地域を特定するために、トノサマガエルの生息適地も同時に調査した。2022年6月–7月と2023年6月–7月の2か年にわたり、両種の分布調査を実施した。そして、最大エントロピーモデルを使用して、はす川流域における両種の繁殖期の生息適地を推定した。分布調査の結果、ナゴヤダルマガエルは主に下流域に分布し、トノサマガエルは流域全域の山際付近に分布していることが分かった。ナゴヤダルマガエルの生息確率は平均標高と強い負の関係があり、標高が高くなるほど生息確率が低くなることが示された。また、トノサマガエルの生息確率は、水田面積、地形湿潤指数、林縁距離と負の関係を示すことが明らかとなった。繁殖期の生息適地を推定した結果、ナゴヤダルマガエルは下流域で生息確率が高く、上流域では低くなることが示された。一方、トノサマガエルは山際から離れた平地の水田で生息確率が低いことが示された。この結果から、ナゴヤダルマガエルの保全を行う際は、下流の水田地帯が適していると考えられた。ナゴヤダルマガエルの生息確率が高く、トノサマガエルの生息確率が低い地域を選択することで、繁殖干渉を抑制できるため、効果的な個体数回復が期待できる。
ISSN:1342-4327
2424-1431
DOI:10.18960/hozen.2405