光共生を行う浮遊性有孔虫類の海洋生態学的研究

単細胞動物プランクトンである浮遊性有孔虫には,藻類との細胞内共生関係を築く種がおり,その関係性を「光共生」と呼んでいる。浮遊性有孔虫は,炭酸カルシウムの殻が微化石として地層中に保存され,かつ殻に生きていた当時の海洋環境および生態のシグナルが残されるという特徴があり,長時間スケールでの地球環境と生命の相互作用を探る上で,格好の研究材料である。また光共生は,生物進化的に重要な生態であるだけでなく,貧栄養海域における栄養戦略として,また炭素を中心とした物質循環の観点からも,地球表層システムにおいて重要な役割を果たしている。本稿では,浮遊性有孔虫と光共生に関する過去の知見を振り返りながら,著者らがこれ...

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Published in海の研究 Vol. 32; no. 2; pp. 17 - 35
Main Author 高木, 悠花
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本海洋学会 15.03.2023
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Summary:単細胞動物プランクトンである浮遊性有孔虫には,藻類との細胞内共生関係を築く種がおり,その関係性を「光共生」と呼んでいる。浮遊性有孔虫は,炭酸カルシウムの殻が微化石として地層中に保存され,かつ殻に生きていた当時の海洋環境および生態のシグナルが残されるという特徴があり,長時間スケールでの地球環境と生命の相互作用を探る上で,格好の研究材料である。また光共生は,生物進化的に重要な生態であるだけでなく,貧栄養海域における栄養戦略として,また炭素を中心とした物質循環の観点からも,地球表層システムにおいて重要な役割を果たしている。本稿では,浮遊性有孔虫と光共生に関する過去の知見を振り返りながら,著者らがこれまで行ってきた研究を,光共生シグナルの抽出,および光共生に関わる生物学的現象の解明を中心に概説する。また最後に,今後の光共生プランクトン研究の展望についても述べたい。
ISSN:0916-8362
2186-3105
DOI:10.5928/kaiyou.32.2_17