煎茶の浸出液及び粉末茶溶液の成分含有量の比較

(緒言) 緑茶は,わが国で古くから嗜好飲料として国民に親しまれてきた.しかし,家計調査1)を見ると,2010年以降,緑茶は茶葉の消費よりもペットボトルや缶の茶飲料の消費が高まっている. 近年,緑茶(煎茶)を粉末状にした「粉末茶(粉茶)」は,茶葉の廃棄がなく簡便に調製できるため,給食などで「お茶」として提供されることも多い.また,煎茶を急須で淹れた場合,煎茶の成分で湯に抽出された成分のみを摂取することができるが,粉末茶を湯に溶かしすべて飲む場合は,茶葉の持つ多くの成分を摂取することが可能になる.このことから,健康志向を背景に,緑茶の栄養成分を「まるごと摂取できる」というイメージから粉末茶への関心...

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Published in千葉県立保健医療大学紀要 Vol. 16; no. 1; p. 1_156
Main Authors 鈴木, 亜夕帆, 渡邊, 智子, 細山田, 康恵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 千葉県立保健医療大学 31.03.2025
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ISSN1884-9326
2433-5533
DOI10.24624/cpu.16.1_1_156

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Summary:(緒言) 緑茶は,わが国で古くから嗜好飲料として国民に親しまれてきた.しかし,家計調査1)を見ると,2010年以降,緑茶は茶葉の消費よりもペットボトルや缶の茶飲料の消費が高まっている. 近年,緑茶(煎茶)を粉末状にした「粉末茶(粉茶)」は,茶葉の廃棄がなく簡便に調製できるため,給食などで「お茶」として提供されることも多い.また,煎茶を急須で淹れた場合,煎茶の成分で湯に抽出された成分のみを摂取することができるが,粉末茶を湯に溶かしすべて飲む場合は,茶葉の持つ多くの成分を摂取することが可能になる.このことから,健康志向を背景に,緑茶の栄養成分を「まるごと摂取できる」というイメージから粉末茶への関心も高まっている. 日本食品標準成分表2)では,煎茶「茶葉」「浸出液(茶葉から抽出した液体)」,抹茶(粉末)の成分値の収載はあるが,粉末茶を使用した液体の成分値の収載はされていない. そこで,従来通りの煎茶の浸出液,同じ茶葉を粉末にした場合の浸出液における成分含有量の違いについて,無機質を中心に成分分析を行い,茶葉の栄養成分がどの程度摂取可能かを明らかにすることを目的とした.(研究方法) 試料:煎茶A(静岡県産深むし茶,1,000円/100 g),煎茶B(静岡県産深むし茶,2,000円/100 g).粉末茶は,茶葉用のセラミックミル(HARIO OMC-1-SG)を用いて,サンプル抽出日前日に茶葉を粉末にして冷凍保存した. 抽出方法:茶葉は,プラスチック製急須を90℃の蒸留水200 mlで温め,湯を捨ててから,茶葉5g+90℃蒸留水215 mlで1分間抽出し,4回に分けてろ紙に出した(1回ごとに急須を振り,茶葉を急須内に均一にしながら排出した).4回目は20回急須を振った. 粉末茶は,300 mlビーカーを90℃の蒸留水200 mlで温め,湯を捨てて,粉末茶2.5 g+90℃の蒸留水215 mlを入れた直後にガラス棒で混ぜ,その後1分間抽出し,ろ紙に出した. 成分分析:水分は常圧加熱乾燥法,灰分は直接灰化法,無機質は原子吸光法,ビタミンC・スクロース・総糖度はRQフレックス法で実施した.(結果) 茶葉浸出液(従来法)と同程度の抽出になるように粉末茶の量を調整した場合,茶葉浸出液(従来法)を100とすると,水分:煎茶ABともに100%,灰分:煎茶A94%・煎茶B77%,マグネシウム:A69%・B62%,ナトリウム:A73%・B92%,カリウム:A68%・B63%,ビタミンC:A80%・B77%,総糖質およびスクロース量:検知限界以下となった. 茶葉の価格の違いによる比較をした場合,煎茶A浸出液を100とすると,マグネシウム:葉115%・粉103%,ナトリウム:葉135%・粉169%,カリウム:葉110%・粉102%となった.(考察) 本研究では,粉末茶浸出液は従来法の茶葉浸出液より低くなった.これは,従来法と同程度の味になるように粉末茶抽出の際の粉量を茶葉抽出の1/2量にしたこと,抽出後にろ過を行い液体のみを分析したことも関連があると考えられた.通常,粉末茶はろ過することは少なく,抽出液中に混入した粉末茶も一緒に摂取することができるため,急須でろ過を行う茶葉抽出液より多くの無機質を摂取できると考えられる. 茶葉の違いによる比較では,価格により浸出液の水分量は変わらないが,価格が高い茶葉のほうが,茶葉でマグネシウム,ナトリウム及びカリウムに,粉末茶でカリウムの含有量が多くなったことから,摂取目的に合わせて茶葉を選択することも可能であると考えられた.
ISSN:1884-9326
2433-5533
DOI:10.24624/cpu.16.1_1_156