非拘束自由行動マウスからの神経活動記録法の確立

一般に,動物が急激なストレスに晒されると,心拍・呼吸・血圧の上昇,鎮痛作用などが引き起こされるが,これはストレス防衛反応と呼ばれている.交感神経系の賦活化により引き起こされるこれらの反応は,例えば天敵に遭遇した場合などに動物個体の生存確率を上げるために必要不可欠な反応である.以前の研究で,オレキシン欠損マウスにおいて,ストレスによる心拍・血圧上昇が減弱することが知られていることから,視床下部オレキシン神経は,このストレス防衛反応に深く関わっていることが推察される.しかし,このような働きをもつオレキシン神経が,ストレスが負荷された瞬間およびその前後においてどのようなタイムコースで活動しているのか...

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Published in自律神経 Vol. 58; no. 1; pp. 116 - 120
Main Author 山下, 哲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本自律神経学会 2021
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ISSN0288-9250
2434-7035
DOI10.32272/ans.58.1_116

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Summary:一般に,動物が急激なストレスに晒されると,心拍・呼吸・血圧の上昇,鎮痛作用などが引き起こされるが,これはストレス防衛反応と呼ばれている.交感神経系の賦活化により引き起こされるこれらの反応は,例えば天敵に遭遇した場合などに動物個体の生存確率を上げるために必要不可欠な反応である.以前の研究で,オレキシン欠損マウスにおいて,ストレスによる心拍・血圧上昇が減弱することが知られていることから,視床下部オレキシン神経は,このストレス防衛反応に深く関わっていることが推察される.しかし,このような働きをもつオレキシン神経が,ストレスが負荷された瞬間およびその前後においてどのようなタイムコースで活動しているのか,その詳細は明らかとなっていない.ストレス誘発自律応答に関わる脳内回路を同定するためには,無麻酔・非拘束状態のマウスを用いて実験を行う必要がある.また,視床下部には多くの異なる種類のペプチドニューロンが混在しており,これらの中からオレキシン神経細胞のみの活動を抽出する必要がある.細胞外記録などの従来の電気生理学的方法を使用して,覚醒ラットのオレキシンニューロンの活動を記録し,その後,免疫組織化学手法により記録されたニューロンを特定する方法や,記録電極を細胞にパッチする単一細胞記録技術によっても記録できるが,マウスの脳には約2,000〜3,000個のオレキシンニューロンがあるので,一度に1つまたは2つの神経活動しか記録できないこれらの手法では,サンプリングバイアスを考慮する必要がでてくる.これらのことをふまえると,本実験には,ファイバーフォトメトリー(FP)法が最適であると判断した.
ISSN:0288-9250
2434-7035
DOI:10.32272/ans.58.1_116