副腎皮質癌の腫瘍栓が後大静脈から右心系にまで達した犬の1例

ウェルシュ・コーギー・ペンブローグ,15歳,避妊雌が,腹囲膨満と運動時の虚脱を主訴に来院した。本例は3年前に近医にて実施された腹部超音波検査において,副腎腫瘍の可能性を指摘され,トリロスタンの内服治療を受けていたが,1年前からは後大静脈内腫瘍塞栓とみなされる超音波所見を随伴していた。当院で実施した経胸壁心エコー図検査では,右傍胸骨左室流出路断面像にて右心腔内に可動性の大型異常構造物が描出された。さらに右傍胸骨右室流入路断面像では,異常構造物は後大静脈から右心室腔内までつながっていた。以上の検査所見から,右心腔内の異常構造物は副腎腫瘍の後大静脈内進展に起因する右心腔内腫瘍塞栓と仮診断した。飼い主...

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Published in動物の循環器 Vol. 52; no. 2; pp. 61 - 67
Main Authors 藤岡, 崇伯, 野村, 雅史, 田邊, 美加, 西田, 卓真, 吉村, 公仁子, 岩本, 希生, 岩崎, 大樹, 山口, 明子, 山口, 潤, 日高, 勇一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本獣医循環器学会 2019
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Summary:ウェルシュ・コーギー・ペンブローグ,15歳,避妊雌が,腹囲膨満と運動時の虚脱を主訴に来院した。本例は3年前に近医にて実施された腹部超音波検査において,副腎腫瘍の可能性を指摘され,トリロスタンの内服治療を受けていたが,1年前からは後大静脈内腫瘍塞栓とみなされる超音波所見を随伴していた。当院で実施した経胸壁心エコー図検査では,右傍胸骨左室流出路断面像にて右心腔内に可動性の大型異常構造物が描出された。さらに右傍胸骨右室流入路断面像では,異常構造物は後大静脈から右心室腔内までつながっていた。以上の検査所見から,右心腔内の異常構造物は副腎腫瘍の後大静脈内進展に起因する右心腔内腫瘍塞栓と仮診断した。飼い主は積極的な外科的治療を希望せず,本例は当院初診の10日後に呼吸困難により自宅で死亡した。死後の病理学的検索により,右心腔内の異常構造物は副腎皮質癌に由来する右心腔内腫瘍塞栓であることが確認された。
ISSN:0910-6537
1883-5260
DOI:10.11276/jsvc.52.61