胸部外科手術後の抗生剤選択がIL6に与える影響 イミペネムとフロモキセフ

開胸手術後にサイトカインの上昇を認める事は知られているが, その上昇の程度が抗生剤の選択に影響されることについては知られていない。開胸手術後に抗生剤の予防的投与を行う事は広く行われているが, 予防的であるが故に抗生剤選択の客観的な基準は作成しがたい点があるのは否めない。重症感染症に対する治療においては選択する抗生剤により血中エンドトキシン濃度やサイトカインに差異が生じる事が知られており, 今回われわれは予防的投与においても同様の差異が認められるかを検証した。前述の重症感染症においてはイミペネムが他のセフェム系抗生剤に比してサイトカインの上昇が少ないと信じられており, 本稿ではイミペネムとフロモ...

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Published inThe Japanese Journal of Antibiotics Vol. 51; no. 9; pp. 576 - 582
Main Authors 岡, 隆宏, 相馬, 彰, 藤田, 直久, 戸田, 省吾, 北浦, 一宏, 山岸, 久一, 佐藤, 伸一, 和田, 行雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本感染症医薬品協会 25.09.1998
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ISSN0368-2781
2186-5477
DOI10.11553/antibiotics1968b.51.576

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Summary:開胸手術後にサイトカインの上昇を認める事は知られているが, その上昇の程度が抗生剤の選択に影響されることについては知られていない。開胸手術後に抗生剤の予防的投与を行う事は広く行われているが, 予防的であるが故に抗生剤選択の客観的な基準は作成しがたい点があるのは否めない。重症感染症に対する治療においては選択する抗生剤により血中エンドトキシン濃度やサイトカインに差異が生じる事が知られており, 今回われわれは予防的投与においても同様の差異が認められるかを検証した。前述の重症感染症においてはイミペネムが他のセフェム系抗生剤に比してサイトカインの上昇が少ないと信じられており, 本稿ではイミペネムとフロモキセブの2種の抗生剤を計13例の開胸術症例に2群に振り分けサイトカイン上昇を調べた。IL6は手術直後から両群で上昇したが, イミペネム群ではその後の低下が早く, 術後4日目には有意に低い値となった。しかしながら両群とも感染症発症には至らないためか術後7日目では有意差は消失した。予防的投与における抗生剤選択によってはサイトカイン濃度から推測して, 続発する感染症が起きた際には生体に対する侵襲を増大する可能性があることが示唆された。
ISSN:0368-2781
2186-5477
DOI:10.11553/antibiotics1968b.51.576